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AV撮影の裏側第2弾!AV監督のありがたいお言葉をチェック!

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
赤異本 外薗昌也 より 抜粋
実話怪談「おんな」⑧ AV女優(2)
ようやく怪談が書き溜まり、編集者と共に実際の本に入れる怪談の校正と選別作業に入り始めた頃だった。
AV女優の話の校正にとりかかったその時、僕の携帯が鳴った。
こんな朝早くから誰だろう?と思いながら着信表示を見て驚いた。
なんという偶然だろう。電話は怪談の提供者の元AV監督Jさんからだった。
「起きてましたか! よかった!」
半年振りに聞くJさんの声の、取り乱した調子が僕を不安にさせる。
〈あの話は出さないでくれ〉という願い出だろうか?
特殊な業界だから充分あり得る。
「何か……問題でもありました?」
恐る恐る訊ねる僕に
「あった、あった!大ありです!」
興奮したJさんの返事が返ってきた。

新宿の喫茶店で再会したJさんは、AV業界に戻っていた。
「勤めてたデザイン会社が潰れましてね。」
しばらくぶらぶらしていたらしいのだが、ネット配信事業に乗り出したAV監督時代の元事務所に声を掛けられたのだそうだ。
「昨夜から事務所に篭って、撮ったばかりの新作のビデオを編集してたんすけど……」
「撮影時には気付かなかったんすが、和室の撮影のシーンで、天袋のところが途中で少し開いてるのに気づいたんすよ。」
「怒りましたよ。誰だよ、こんな所開けたの!カットが繋がらなくなるじゃんか!って。」
よくある事なのだそうだ。
時間を空けて撮る場合に、状況を再現し損ねる。

映画の物語中、昼だったのに外に出ると夜になっていて観客を失笑させる。
最低映画監督として名高いエド・ウッドがよくやらかしていたミス。

やっちまったー!
このカラミ、没にするしかないかぁ……。
頭を抱えるJ氏。
だが、ふと『おかしい』と気づく。
ビデオでは延々とカラミのシーンを撮影していて、休憩も殆ど入れていない。
ましてやJさんはその狭い八畳の部屋から動いておらず、身長一七五センチの彼が背伸びをすれば届く高さの天袋を開ける人間がいたら、気づかない筈はない。
では何故開いていたのか?
しかも、フィニッシュのシーンでは天袋が閉じているのはなぜ?
誰かが気づいて閉じたのか?
いや、有り得ない。
その場にいたのはカメラを回すJさんと女優と男優だけだったのだから。

一気に喋るとJさんは冷めたコーヒーを一口啜った。
奇妙な寒気を感じながら僕は
「その隙間に何か映ってたりしましたか?」
と尋ねてみた。
Jさんはゆっくりと頷き、メモ帳に簡単な絵を描いて私によこした。
僕は何が描いてあるのか判らず首を傾げた。
するとJさんはジェスチャーでメモ帳を九十度回転するように指示をした。
「うっ!」
指示に従ってメモを回転させた僕は唸った。
平行に書かれた線の間には……
黒目の無い目が四つと手が三つ。グシャグシャと描かれているのは髪の毛だろうか。
「凄いでしょ?拡大したらそんな風に見えたんす。でも一番の問題は……」

「あの女によく似てるんすよ。」


Jさんが遭遇した〈スタジオに入り込んでいた謎の女優〉に顔がそっくりなのだという。
「…………!」
絶句し、うつむく僕。
再び現れたという事?しかも進化して?いやこれが実体なのか?それにしても……
このタイミングって。
〈話を世に出すな〉って抗議って事?どうしよう?この話は編集が気に入ってたのに……。
でも……。
予想外の展開に言葉が見つからない。
どうしよう?どうしよう?どうしよう?と思考が空回りする。
ゾワゾワゾワゾワと全身に何かが這い上がってくる感じが続いていた。
恐ろしくてたまらない。

「どうします?」
Jさんの声にハッと顔を上げると、氏は笑っていた。
「え?」
「見ます?」
Jさんはにこやかな笑顔でそう言った。
「え?」
「今事務所に来たら、そのビデオ見せますよ。商品だからコピーはちょっと出来ないんすけど、オレ一人で見るの勿体無いし。」
「え、あの、その……。」

僕は予定があるからと丁重に申し出を断り、しきりに残念がるJさんを置いて逃げるように帰宅した。
怪異が大好きな僕が、なぜビデオを見に行かなかったのか?
と読者の皆さんは思われるだろうが、怖かったのだ。
たまらなくJさんが怖かったのだ。
ビデオに写りこんだ異形の女の話を聞いて全身に悪寒がしたのではなかった。
目の前に、にこやかに座るJさんに恐怖を感じていたのだ。
僕が顔を上げた瞬間、耳元で女の小さな声が聞こえた。

コ イ ツ ガ コ ロ シ タ

Jさんが所属していた事務所が非合法組織の運営する事務所であるのをネットの某巨大掲示板で知った。
過激な内容のビデオで収益をあげ、警察に何度も摘発されているという曰く付きの事務所だった。
〈行方不明になった女優もいる〉という書き込みを見つけた時は膝が震えた。

あのままついて行っていたらどうなっていたんだろう?


J氏から連絡が来ないよう日々祈っている。




creator-masaya-hokazono
ギャグから始まり。ファンタジー、SFと移行していき、今はホラー。何故こうなったのか?とよく尋ねらる。昔、ある俳優さんから『役者はお祓いはしないんですよ』と教えられて驚いたことがあ...
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