~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
怪談実話 病棟の道化師 より
「バックミラー」
著書:遠山 雅
同僚Nの話だ。
ある日、Nが車で走っていると、前の車に乗っている子どもがこちらを見ながら、ニコニコ笑っているのに気がついた。
無邪気なその姿に微笑ましくなり、軽く手を振ってやったという。
が、子どもは反応しない。ただ、ニコニコ笑い続けている。
もう一度、今度は笑顔で手を振ってやったが、やはり子どもの反応はなかった。
そこで初めて、子どもを不気味に思った。
あの子は、なんであんなに笑っているのだろう……。
一度不気味と思うと、それ以降は不気味にしか思えなくなった。
ニコニコだと思っていた笑顔でさえ、ニヤニヤに感じてくる。
前の車と離れたい。
そう思ったときだった。いきなり、前の車が衝突事故を起こした。前の前の車にぶつかったらしい。
おかげで、車間距離をあまり取っていなかったNは、足止めを喰らう羽目になってしまった。
正直、かなり苛ついた。だが、医療従事者として、なかなか出てこない前の車の運転手が心配にもなった。
仕方なく車を降りてドアを叩いた。窓越しに、どうにか運転手の意識はあるらしいことがわかった。
「大丈夫ですか?」
のぞきこむと、不思議なことに気づいた。
「あれ? ちっちゃい子は?」
そう言うと、運転手がすがるような目でNを見てきた。
運転していると、バックミラーに乗せた覚えもない子どもが映ったという。
振り返ってみたが、誰もいない。
しかし、バックミラーを見ると、いる。
後部座席から後ろの車をのぞくようにして、子どもが座っている。ずっとそうして、映っている。
なにが起こっているのかわからず、怖い怖いと思いながら運転していたら、前方不注意で衝突してしまったのだと言った。
繰り返しそう尋ねてくるその人に、その子どもが不気味に笑っていたと、Nはどうしても言えなかった。
それ以降Nは、見知らぬ子どもが映るかもしれないという恐怖が脳裏からどうしても払拭できず、バックミラーを見ることができない。
ある日、Nが車で走っていると、前の車に乗っている子どもがこちらを見ながら、ニコニコ笑っているのに気がついた。
無邪気なその姿に微笑ましくなり、軽く手を振ってやったという。
が、子どもは反応しない。ただ、ニコニコ笑い続けている。
もう一度、今度は笑顔で手を振ってやったが、やはり子どもの反応はなかった。
そこで初めて、子どもを不気味に思った。
あの子は、なんであんなに笑っているのだろう……。
一度不気味と思うと、それ以降は不気味にしか思えなくなった。
ニコニコだと思っていた笑顔でさえ、ニヤニヤに感じてくる。
前の車と離れたい。
そう思ったときだった。いきなり、前の車が衝突事故を起こした。前の前の車にぶつかったらしい。
おかげで、車間距離をあまり取っていなかったNは、足止めを喰らう羽目になってしまった。
正直、かなり苛ついた。だが、医療従事者として、なかなか出てこない前の車の運転手が心配にもなった。
仕方なく車を降りてドアを叩いた。窓越しに、どうにか運転手の意識はあるらしいことがわかった。
「大丈夫ですか?」
のぞきこむと、不思議なことに気づいた。
子どもがいない。
「あれ? ちっちゃい子は?」
そう言うと、運転手がすがるような目でNを見てきた。
運転していると、バックミラーに乗せた覚えもない子どもが映ったという。
振り返ってみたが、誰もいない。
しかし、バックミラーを見ると、いる。
後部座席から後ろの車をのぞくようにして、子どもが座っている。ずっとそうして、映っている。
なにが起こっているのかわからず、怖い怖いと思いながら運転していたら、前方不注意で衝突してしまったのだと言った。
「……いましたよね? 子ども、いましたよね?」
繰り返しそう尋ねてくるその人に、その子どもが不気味に笑っていたと、Nはどうしても言えなかった。
それ以降Nは、見知らぬ子どもが映るかもしれないという恐怖が脳裏からどうしても払拭できず、バックミラーを見ることができない。
-終-