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会いたくて会いたくて震える?

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
赤異本 より
「義母のはなし」
著書:外薗 昌也
僕にとって一番怖いものは〈女〉である。
これほど愛らしく恐ろしいものが、この世に他にあるだろうか?
〈女〉についての怖い話を書いてみようと思う。
今年八十歳になる僕の妻の母親……つまり僕の義理の母のM子さんは、やる事なす事全てがマイペースな可愛らしい女性だ。
僕は『お義母さん』とは呼ばず『M子さん』と親しみを込めて名前で呼んでいる。
そのM子さんが不思議な夢を見た。
お盆の朝。里帰りしていた僕ら家族で賑わう居間に

「変な夢見たっちゃけど~」

とM子さんが入ってきた。

「どんな夢見たんですか?」

「それが昔の友達やとよ。さっぱりわからんのよぉ」

困惑した顔のM子さんは首をかしげる。
もう昔に亡くなってしまった友達が夢に現れ、嬉しそうな顔でM子さんに何かを告げて消えたのだという。

「なんて言ったんですか?」

と問う僕に

「もうさっぱり意味がわからんとよ~」

と、なおも首をかしげるだけのM子さん。
全然僕の話を聞いてない。
僕とM子さんのトンチンカンなやりとりを見て家族が笑っていると、電話が鳴った。
受話器をとったM子さんは電話口の相手と二言三言会話を交わすと

「 えっ? 死んだ? 」

と小さく叫んで固まってしまった。
見るとM子さんの顔は血の気を失っている。
そして

「ああ、そういうことだったの……」

と呟いてその場に座り込んでしまった。

M子さんの夢に現れたというお友達の名前はK子さん。
二人は若い頃の職場の同僚で、とても仲が良かったという。二人共寿退社したが、その後も連絡を取り合いよく会っていたそうだ。
しかし……

「それが急に体の具合が悪くなってねぇ、病院に行って診てもらったとよ。ほしたら……」

癌だったという。それも末期だった。
K子さんの旦那さんから

「もって半年」

と聞かされたM子さんは、病室で元気そうに振舞うK子さんを見る度に切なくてたまらなかったという。
時間を作っては病室へ足を運んでいたのだが、ある日K子さんの元を訪れると、いつになく元気なくしょんぼりしていた。

「体きついの?」
と訊くと

「そうじゃない」

という返事が返ってきた。

「旦那さんに女ができてたらしいとよね」

「え?他に女ですか?」

僕は驚いて声を上げてしまった。

「私も後で知ったっちゃけど、その頃旦那さんは職場で知り合った女の人と出来ちょったらしいとよ」

旦那さんの様子でそれを悟ったK子さんは病室で問いただしたのだという。

「あなた、他に好きな人ができたんでしょう?怒らないから教えてちょうだい」

そう言うK子さんに

「お前の思い違いだ」

と旦那さんは頑として認めなかったそうである。

「K子さんは自分が長くないの、分かってたみたい。だから自分のあとに来る人に会って挨拶したかっただけやったのよ。でも、旦那さんは聞いてくれんかった」

旦那さんは最後までシラをきり通し、K子さんは結局旦那さんの再婚相手に会えないまま亡くなったという。
しばらくして旦那さんは密かにつき合っていたその女性と再婚。
子供もできて幸せそうだったらしいのだが……

「子供が中学に上がる前に、彼も癌で死んでしまったとよ」
旦那さんの早すぎる死に、周囲では
〈死んだ奥さんが呼んだんじゃないか〉
とちょっとした噂になったらしい。
再婚相手は一人で働きながら子供を育てていたそうだが

「それが昨日の晩に倒れたそうでな。脳梗塞ちゅう話じゃった。ほいで今死んだって連絡が来たとよ」

「それでやっとK子さんの言った意味がわかった」

「なんて言ったんですか?」

再び問う僕。

夢に現れたK子さんは満面の笑みでこう言ったという。

M子ちゃ~~ん。やっと会えたのよ~~~
「ずっと会いたかった再婚相手に会えて、K子ちゃん嬉しそうやった」

お義母さんは最後にそう言うと寂しそうに笑った。

-終-
creator-masaya-hokazono
ギャグから始まり。ファンタジー、SFと移行していき、今はホラー。何故こうなったのか?とよく尋ねらる。昔、ある俳優さんから『役者はお祓いはしないんですよ』と教えられて驚いたことがあ...
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