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2016年10月29日

『墓荒らしアイドル』 墓荒らしアイドル 第1回福谷修

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
「恐怖のお持ち帰り~ホラー映画監督の心霊現場蒐集譚」 より
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「墓荒らしアイドル」
第1回 著書:福谷修
「うーん、ちょっとやり過ぎたかな。でも、今となっては良い思い出だけどね」
行きつけの居酒屋でタバコをくゆらせながら、M氏は自嘲気味に笑った。

TV局で長年、報道記者を務めてきたM氏が、突然、バラエティ番組の制作部に異動させられたのは、ウマの合わない上司と酒の席でトラブルになった直後だった。

最初は退社も考えたが、 「早く報道に戻るためにも、とにかく面白い番組を作るしかないな」と自分に言い聞かせた。

そんなM氏がバラエティのプロデューサーとして初めて任されたのが、アイドルグループがMCを務める、深夜番組。内容は、夏の定番、肝試しだ。
予算も無く、カメラも一台だけ。
全くやる気が起きないままM氏は、下請けの制作会社の若いスタッフや、出演する二人のアイドルとロケバスに乗った。

訪れたのは山間の古寺だった。

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境内のすぐ隣に墓地があり、年代物の墓石がひしめき合うように並んでいる。
四方をうっそうとした木々に囲まれ、あまり手入れが行き届かない無縁墓地なのか、昼間でも訪れる人はいなかった。
日が落ちてから、番組の収録がスタートした。

台本通り、二人のアイドルはおびえながら墓地を練り歩いた。
辺りには外灯が数えるほどしかなく、スタッフのライトを当てられ、闇の中にずらりと浮かび上がる墓石の列は、昼間とは異なり、なかなか異様な迫力を醸し出している。

ここがバラエティの肝試しでよく使われる理由がわからないでもなかった。
アイドルたちも、かすかな物音一つにも「ひっ!」 「もうやだ!」などとわかりやすく悲鳴を上げて反応する。
特に、ショートヘアの子はリアクションが上手く、墓地に足を踏み入れた時から「ここ、なんかやばいです……」と言い続けて、相棒のロングヘアの子をびびらせていた。

二人は、墓石や卒塔婆、壊れた手桶台、水の出ない手洗い場、雑草にまみれた地蔵など、台本で指定されたポイントで立ち止まり、指示されたミッションをクリアしながら、やがて墓地のはずれの、一際大きな松の木の前で足を止めた。そして途中の地蔵の前掛けに隠された(という設定の)お札を二人で木に貼り、最後に手を合わせた。

「はい、OKですっ」

台本を確認した後、ディレクターが笑顔を見せる。

「お疲れ様。じゃあ、後は、逃げるように二人が境内に戻るエンディングを撮って、終わりにしましょう」

撮影はトラブルもなく極めて順調だ。
皆、和気藹々として、笑顔で境内への移動を始めた。

ただ一人、M氏だけは浮かない顔をした。プロデューサーの仕事と言っても、現場はディレクターに任せて、見守っているだけでいい。楽なものだ。
しかし、これまで数々の事件現場をエネルギッシュに回ってきたM氏にとって、この緊張感の無さは、どうにも違和感が拭えなかった。

このままでいいのか、俺は……。
M氏は焦燥感に駆られながら、歩いてきた墓地を引き返そうとした。


その時、背後で「いやっ……」と声がした。
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