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【怖い話】山道をひたすら進むその先に…

2016年10月29日

『全国の怖い話シリーズ』 愛知の怖い話 「旧伊勢神トンネル(愛知県豊田市)」福谷修

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
「旧伊勢神トンネル(愛知県豊田市)」
著書:福谷修
愛知県屈指の心霊スポットで知られる「旧伊勢神トンネル」。

明治三十年(一八九七年)に開通し、国の有形文化財に登録されている、歴史あるトンネルだ。
昭和三十五年(一九六〇年)に「新伊勢神トンネル」が開通したことで、その目的を終えたのだが、今でも普通に通ることができる。

山奥にひっそりとたたずむ年代物のトンネルは、様々な曰く付きの伝説を秘めていそうだが、実際にはこの旧トンネルでは表立った死亡事故や事件は起きていないらしい。
むしろ新トンネルの工事中に死亡事故が発生していたり、旧トンネルの周辺でも伊勢湾台風の土砂災害で三人の親子の死者が出ている。
そのせいか、新トンネルには女性の霊が、旧トンネルには子供の霊が現れるといわれる。
また、ここから派生したのか、新トンネルでは「女性を車に乗せたらいつのまにか姿が消えていた」、旧トンネルでも「子供の霊を目撃すると、あの世に引き込まれる」「女性が行方不明になった」といった真偽不明の証言が残されている。

他にも、肝試しなど、興味本位で旧トンネルを訪れた人々には「帰宅後に高熱を発して何日もうなされた」「自宅で変死を遂げた」など、トンネルを出た後に様々な災難に見舞われるという。
まさに最凶の心霊スポットらしい不気味な噂は後を絶たない。
私自身、旧伊勢神トンネルの噂には以前から興味を持っていた。
実はこれまでロケハンや取材などの仕事絡みを除けば、プライベートで心霊スポットを訪れたことは一度もなく、なかなかトンネルを訪れる機会に恵まれなかった。
しかし今回、執筆するに辺り、どうしても一度訪れておきたかった。
そこで私は、久々に監督した映画「劇場版 恐怖のお持ち帰り ~ホラー映画監督の心霊実話怪談~」の名古屋シネマスコーレでの舞台挨拶の後、レンタカーを借りて、旧伊勢神トンネルを目指すことにした。
名古屋からは高速道路を使って一時間半。
最寄りのインターで下りると、そこはすでに深い山合いだ。
そこからさらに山道を走ること一時間以上。
本当にこのルートで大丈夫なのかと不安に思っていると突如、今までとは明らかに雰囲気の異なるトンネルが現れた。カーナビ画面で確認するまでもなく「新伊勢神トンネル」だった。
新トンネルとはいえ、完成から既に半世紀以上が経過し、独特の圧迫感がある。
旧トンネルと比べても実際の怪異の噂が多いというのもうなずけた。
ただし観光地と観光地を結ぶルートのトンネルのため、夜間でも交通量が多く、壁や天井、路面もきれいに整備されているため、心霊スポットとしては少々物足りなかった。
この新伊勢神トンネルを走り抜けると、すぐに左手に細い道が枝分かれして現れる。
ここが「旧伊勢神トンネル」の入口らしい。
一度、車を止めて外に出てみる。背後の新トンネルは、相変わらず車が絶え間なく通るが、旧トンネルにつながる道に入ってくる車は一台もなかった。
有名な心霊スポットだけに、もっと多くの人が訪れるものと思っていたが、全くの拍子抜けだ。
さて、深夜ではないものの、辺りは日が落ちている。
旧トンネルにつながる道は完全な山道で、外灯もなかった。
車とはいえ、誰もが一度はためらうだろう。
もちろんここまで来て引き返すわけにもいかず、私は決意して車のアクセルを踏んだ。
道は車が一台通るのがやっとの細い道。
もしも前から車が来たら、すれ違うことは困難で、広めの道までバックして戻るしかない。
しかし山の斜面を切り拓いた道は、ガードレールも一部しかなく、運転を誤ればいとも簡単に崖から落ちてしまうだろう。
おまけに道幅は徐々に狭くなる。
慣れないレンタカーの運転もあって、車両の感覚がなかなかつかめない。
このままでは危険と判断した私は悩んだ末に、山の中腹の、多少道幅が広くなったカーブの奥に車を止めて、旧伊勢神トンネルまでの残りの道のりを歩くことにした。
ハンディライトを持って山の夜道をひたすら歩く。
まさかこのタイミングで山登りに挑戦するとは思ってみなかった。
途中には「落石注意」「クマに注意」と警告の看板が立ち、少し後悔したが、戻るのも大変だった。
辺りは真夏にもかかわらず、空気がヒンヤリとして張り詰め、汗をかかないのは救いだが、山を登っていることには間違いなく、妙に心臓の鼓動が高まり、息苦しさを覚えて、足取りもひどく重く感じられた。
途中に外灯はなく、通り過ぎる車も皆無のため、本当にこの道で大丈夫なのか、何度も不安な気持ちにさいなまれた。
このまま遭難したら大変だろうなと緊張しながら、三十分程歩いただろうか。
やや道が開けたかと思うと、木々に囲まれた場所に旧伊勢神トンネルが姿を見せた。
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多部未華子&安めぐみ主演の映画「こわい童謡」や、NintendoDSのホラーゲーム「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」等、ホラー作品の監督・脚本を多数手がける。映画監督デビュ...
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