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【怖い話】ある少女苑での出来事が…

2016年10月29日

『全国の怖い話シリーズ』 広島の怖い話 『少女苑のジャージの女の子(広島市佐伯区)』寺井広樹村神徳子

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
「少女苑のジャージの女の子 (広島市佐伯区)」
著書:寺井広樹・村神徳子
高校生だった安田君は、やんちゃな先輩たちと4人で広島市貴船原にあった「少女苑」に車ででかけた。
ここは県下でも有数の心霊スポット。

安田君は今は女性として生きている。後天性の性同一障害だという。
当時は門や建物があり不気味な様相もさながら、そこまでに行く道が細く、森の中を走らねばならない。
ため池もありいかにも逃げようがない場所。

「ここで何人か逃げて飛び込んだらしい」
「逃げきれんじゃろ、こんな山奥で」
「それで行方不明も多かったらしいわ」
門の中に車を停めると、他のマニアも来ていたようで2、3台のヤンキー車があった。
むしろそういう連中と下手にかちあわせたくないなと思っていた。
「入ろう」
懐中電灯片手に窓から入る。
すでに誰かが入ったようで、声やちょっとした悲鳴も聞こえる。

「これ実は全部幽霊なら怖いよな」
「そりゃないだろ、男の声しか聞こえんわ」
「でも女も悲鳴もあるよな」
「俺らも女連れてくりゃよかったな」
「俺……ちょっと気分悪いわ。車戻ってていいか」

運転手の先輩が気分悪そうに車のキーをちらつかせて駐車場に戻って行った。

「ビビりじゃね?」
「昨日飲み過ぎただけじゃ。寝てるわ」

先輩はそう言うと暗闇に消えていった。

「だらしねえな」

安田君は二人の先輩についていった。

独房のある真っ暗な渡り廊下まできた時だった。
ジャージを着た女が一人戸口に立ってるのが見えた。
「う、うわ!」
安田君は声を上げたが、先輩2人も声を上げたので、

「見ました? 今の女……」
「いたな。でも足あったし見物客じゃねえ?」

ジャージの女はそのまま渡り廊下ですれ違い、外へ出て行った。おかっぱ頭の地味そうな女だったのは覚えている。
でも何というか、存在感がない人間だった。

教室のようなところ、数人が寝ていたというところ、木造校舎のきしむ音が響き、だんだん安田君はなぜか眠くなってきていた。

「先輩、眠いっす」
「寝るな。でももうこの辺でいいか」
「俺、この先行ってくるよ。仲間に自慢すっから」

強気の先輩が奥の扉を開きにいった。
扉を開けたとたん、
「ギャー!」
女の金切り声が響いた。
開けられたドアの中では男数人が立ち、女が座らされている。男の手に竹刀のようなものが見えた。
こっちを振り向く男達。安田君は腰を抜かしそうになった。
「逃げろ!」
先輩が真っ青な顔でこっちへ向かって走ってくる。その先輩の後ろに捕まえようとする様な両手が見えた。
「ヤバい、逃げろ!」
安田君と先輩二人はとにかく走って外に出た。車、車と探し回り、乗ってきた車を見つけた。
「開けろ! 開けろ!」
ドアをドンドン叩くが、中で寝ている先輩が起きない。
隣のヤンキー車にも人が戻ってきていた。

「やべえな、変なの見たよな」

安田君は恐る恐る聞いてみた。

「あの、女の人は連れてないんですか?」

見た目怖そうなお兄さんたちもビビッていて、素直に答えてくれた。

「は? いねえよ。俺ら野郎だけしか」
「女性の声聞こえたんで」
「俺らも聞いたな。ここのもう1台は別の連れみたいだし、そいつらじゃね?」
「けど、ずっと置いてるわりにすれ違わねえよな」

ヤンキー達の4人以外は確かにすれ違わなかった。あ、安田君は思いつく。

「さっきジャージの女の人が……すれ違いましたよ」
「何? お前も見たの? それ見たらヤバいらしいぜ」
「どうなるんですか?」
「とにかく……祟られるっていうぜ」
「奥の部屋で男と女がいましたよ。竹刀持ってて」
「何だそれ……あの奥に部屋なんかあったか?」
「僕ら3人共見て逃げてきました」
「俺ら見てないな。この車の奴ら、エッチな事でもやってんのかもな」
「いやあ、そんな雰囲気じゃなかったっす。叱られてるみたいな感じで」
「悲鳴も聞こえたよな」
「じゃ、やっぱ見たんじゃね? 幽霊」
自分たちの車のドアが開くまで安田君はそのヤンキーたちと話をした。
あのおかっぱの女は女囚の集団部屋でいじめられており、ついにそれを看守に話したことで集団リンチに遭い、そのまま自殺したとも、池に飛び込んだとも言われるとのことだった。
あの竹刀の男は先生で、座らされていたのがいじめた女囚人だとしたら……。
安田君と先輩二人はぞっとしながら、やっと開いた車に乗り込んだ。

「遅えよ。××君が開けないなら隣のヤンキーの車に乗せてもらうとこだった」
「悪い。ちょっとな……」

運転手の先輩が黙ってUターンして出ていく。
皆静かに座っていたら、ため池の辺りで、エンジンがストップした。

「おい、こんなとこで止まるなよ」

後ろからもう一台の白い車が静かについてきた。

「さっきのヤンキーか?」
「いや、奴らは赤だったし違う方の車だろ」

運転手が慌てて真っ青な顔でエンジンをかける。
「かかれ! かかれ!」
エンジンがプスプス言ってなかなかかからない。
助手席の先輩がキーを回してやっとエンジンがかかる。

「はあ、やばかった」

何となく後ろの車を見ると、人影が6人。
セダンの車に随分人が乘ってるもんだなと思って前を向き、そのまま安田君は寝てしまった。
しばらく一本道が続き、目を覚ますと後ろの車はいなかったという。

「あれ、先輩、後ろの車いなくなりましたね」
「やっと逃げられたか」

運転手の先輩はそう言うと、頬から汗がしたたり落ちた。

「俺、車の中で待ってたら、何人も車覗きに来たからよ。鍵閉めて横になってたら、何度もコンコン叩かれて……もうここには絶対来ねえぞ」
「だからすぐ開けなかったのか?」
「そうだ。お前らって最初わかんなかった。人数10人くらいで叩いたろ?」
「いや俺ら3人だけだぞ」
「……そうか。やっぱついてきたんだな。あいつら」
「あいつらって誰だ」
数日後、その運転手の先輩は山奥で事故死した。
安田君は怖くなって、お葬式には行かなかった。二人の先輩は行ったが、その後高い熱を出したりとろくなことがなかったと言っていた。

先輩達とはそれからぷっつりと連絡が途絶え、今はどうしてるかわからないという。
心霊スポットは他にも行ったが、そこで感じたほどの恐怖はなかった。
話し終えると安田君は化粧した顔を私に見せた。

「僕はそれ以来、妙に化粧がしたくなって女の恰好するようになったんです」
「それは単に女装趣味じゃなくて?」
「いえ、こうしないと許してもらえないような感覚が常にあるんです」

安田君はおかっぱのかつらの髪をなびかせて笑った。

-終-

少女苑。広島市佐伯区にあった未成年の女子受刑者の刑務所。
戦後作られたが、東広島市に移転し、その廃屋だけが日の当たらない奥地に佇む。平成12年に取り壊しとなり、今は門だけ残るただの林の中の空間。
一説によると、集団生活の中でひどいいじめを受けてきた女子受刑者が、飛び降り自殺を図り、いじめた受刑者達に刑務官が制裁を加えたはずみで彼女らも亡くなったとも。
この施設で死者はいないが逃亡行方不明者はいる。
そこには開かずの部屋があったとも言われ、何が行われていたか不明。しかしそこを開けた者は、狂うか死ぬかという噂もあったという。
すれ違ったおかっぱのジャージ少女が、安田君に憑いているのだけは感じたが。
少女苑の跡地の山
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1980年生まれ。怪談蒐集家。「ホラ活」(ホラー活動)発案者。大学時代に事故物件に住んだ経験から霊感が強くなる。「怖い話」、「泣ける話」、「試し書き」の蒐集をライフワークとする。銚子...
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作家・脚本家・脚本プロデュース・企業ビジネスアドバイザー。「亜流の歴史」「霊伝説謎解き」を研究。早稲田大学第一文学部英米文学専修卒。12歳~年齢上限なしの作家集団「フライハイ! 」...
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