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【怖い話】なにこれ…怖い… 禁忌に触れた神隠しの真相

2016年10月29日

『全国の怖い話シリーズ』 広島の怖い話 『神隠しの一家心中事件(北広島世羅町)』寺井広樹村神徳子

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
「神隠しの一家心中事件(北広島 世羅町)」
著書:寺井広樹・村神徳子
ルポライターの関さんは、難解事件を解くのが好きで、全国の迷宮入り事件や行方不明事件を取材して記事を書いている。
彼が扱った事件の中で、もっとも事件現場でゾッとしたのが「世羅町一家神隠し事件」だ。
二度と取材したくないと思う現場だったという。
掘り下げれば掘り下げるほど不気味なことが周りで起き、ついに書くのをやめた。
それでもしばらく霊現象が起きるので、数回お祓いに行くほどだった。
その不思議な事件の概要はこうだ。
今から15年くらい前、広島県の世羅町で、50代の夫婦と70代後半の母親と26歳の娘と飼い犬のシーズー犬がこつ然と失踪したのだ。
奥さんは朝から会社の旅行に行く予定で、朝食の準備をしたまま。
全員サンダルばきで パジャマ。
娘さんも別の場所で暮らし、婚約者もいて、たまたま前夜に化粧品を取りに実家に立ち寄っただけ。
なのに全員が消えてしまった。
旅行に来ない奥さんを変に思い、同僚がこの家を訪れてやっと失踪だとわかった。
この事件は全国でも大スクープとなり、心霊学者や透視の人まで出て犯人探しをした。
しかし周りの住民たちはこんな噂をしていた。
「あの山を売ったからじゃ」 「神隠しじゃ」
そう。この一家はこの一帯の地主で、名家と言われた家。
そして近くの山は、江戸時代に女中が逃げて失踪してしまったことがある。
それ以降、 何人か失踪するたび、この山に関わると「神隠し」に遭うと噂されていたのだ。
この山の持ち主がこの一家のご主人の実家であり、売却してしまったのだ。
山を勝手に売ったことの祟りだとも、人々は噂した。

関さんがその家を見に行った時、何だか後ろからじっと人に見られている感じがしたという。
それも数人に。
もちろん他の記者もいるから、人は近くにはいたが振り向くと誰もいない。
また前を向くと、確かに視線や人の気配がする。
「ここに関わるな」
そんな地の底から上がってくるようなつぶやきが聞こえた。
まわりを見回したが、それほど近くには人がいなかった。
背筋がぞっとしたので、そこで家の外観写真を撮って帰った。

写真には白い丸いものがたくさん写っていた。
それを見ただけで首が絞められるような苦しさがあった。
どうも不気味なので霊能者の 友人B氏にその写真を見せた。
「この窓から娘さんが覗いてる。犬を抱いて」
「奥さんと旦那さんが言い合いしてる。仲が悪いようだ」
ニュースなどを見ないB氏が淡々と事件の真相を語っていく。
「それ、奥さんの浮気か何かじゃないかって話があるが……」
「それより、この家に同居の母親がいるか?」
「ああ、いる」
「体が弱っているよな」
「そういう話だった。 79歳だったかな」
「面倒を見るのが嫌になってた雰囲気だな」
「介護になってくれば、どこのうちもそうだろうな」
「……奥さんが旅行に行く間の母親の面倒を見るのは誰だったんだ」
「旦那さん?でも男は仕事だしな……」
「そのために娘が実家に帰ってきたんじゃないのか」
「娘は化粧品を取りに行くって、送った友達に言ったようだが」
「家の事情を知らせたくなかったんだろ。結婚前だったか」
「そ、そうだ……婚約者がいた」
「尚更だろうな。家族の仲を取りまとめるのが娘の肩に重くかかってる」
「じゃあ、やっぱりただの失踪か?」
「この家の主が、旦那さんか、皆を連れてどこか行こうとした。娘が帰ってきて、妻がいなくなる前に家族会議をしようとしてる」
「どこに行ったかわかるか」
「多分どこか……でもこの旦那が何か大きな強い霊に引っ張られている。先祖代々の何かだ……うう山奥ってことしか見えない。どこかで転落してないか」
「いや、まだ発見されてない」
「多分この主の関係がある場所にいる。そこに連れて行ったんだ。狂気的になって乗せたように思う。一瞬の狂気が彼にかかってるのが見える」
「……つまり、心中ってことか?」
「そうだ。だが、単純じゃない。生霊かもしれないがとにかく大人一人を狂わせる霊魂が 旦那に憑いている」
「聞きたいのはこれだ、この家族は生きてるのか、死んでるのか?」
「今はもう死んでいるだろう。この世にいない。だから娘が写ってる」
「どこにいるのかわかるか」
「山が関係してる。息苦しい場所にいる。広い湖のような所」
写真を何度も見るが、関さんには写った窓に娘の霊も何も見えない。
だがBさんはこういった事件をよく当てる。
この一家の事件は暗礁に乗り上げた。
他殺などの事件性が薄くなったからだろう。

関さんはB氏の話から、遺体がどこにあるのかを先に探したいと思った。
もう一度同じ場所に戻る。
雨が降り、事件現場はもう人がいなかった。
家の車でどこかへ行ったとして……山奥というキーワードでそのあたりの山を運転して回った。
ナビがない車だから、だんだん迷って来た。山の方は霧も深まっていた。
その時、車に異変が起きた。
下り坂というのにブレーキがきかない。
よく見るとギアがドライブから勝手にN、ニュートラルになっているのだ。
ニュートラルでは車は傾斜に合わせて進み、コントロールがきかない。
ブレーキがきかない以上、ギアを変えられない。
こうなるとハンドブレーキしかない。慌ててブレーキを手で引く。
「キキー!」
激しいエンストで車が停まった。
ほっとしたのもつかの間、目の前に男の人が立っている。
雨の中傘もさしていない、ずぶ濡れの男。
「うわあああ!」
男の顔が半分骸骨のようにただれ、崩れていた。
運転席で関さんは頭を抱え、しばらく隠れていた。
コンコンと窓を叩く音がする。 絶対に見ない。
そう思って関さんは頭を抱えたままじっとしていた。
すると、ドアをガチャガチャと開ける音がした。
「あっち行け!来るな!」
ついに大声で叫んだ。すると音が止んだ。

うっすら目を開けると、車のフロントから後ろまでずらりと人が立っていた。
ボロボロの着物を着た人、昔の侍のような男、子供、女、カッパのような動物、だがどれも、命がある人間の姿には見えなかった。
「うぎゃあああ」
とっさにエンジンをかける。
古い車のせいか、エンストがいけなかったか何度もかけて、やっとかかった。
ブレーキも効いている。 前を見ずにとにかく山道を降りた。
もうどこかにぶつかってもいいから、この道を越えなければ。降りたら捕まってしまう。
このとき追いかけてくる車も、前を走る車もなかったから、何とか事故も起こさず生き延びたんだと関さんは言う。
「もしカーブに湖や崖でもあったら、落ちて死んでた」

一年近く経ち、近くのダムが水不足で干上がった時があった。
底に沈んでいたのだろう。この一家の車が見つかったのだ。

普通はガスで膨れた水死体は上がってくるのだが、車の中に閉じ込められていたから、 水の底にいたままだったようだ。

関さんはそのニュースを見てぞっとした。
一家心中で済まされたが、関さんは事故だと思っている。
あの山に潜む「神隠し」に遭った霊が山の持ち主が変わることで何か事を起こしたのでは……。
一家が亡くなった後、次の持ち主はあの山をきちんと祀ったのだろうか。
関さんはB氏に連絡を取ったが、なぜかB氏とは連絡が取れなくなった。

そして、引き揚げられた車のギアはN、ニュートラルのままだったという。
関さんのような現象で、運転手がパニックになったのかもしれない。
今も事件は謎に包まれている。
もう二度と話したくないし、行きたくないと関さんは語る。
筆者もこれを書きながら、少し首が絞められたように苦しくなってきたので、ここで筆を置く。
何事も、立ち入らない方がいいところには立ち入らない事が身の安全だ。
ご一家と神隠しに遭った方々のご冥福を祈る。
-終-
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1980年生まれ。怪談蒐集家。「ホラ活」(ホラー活動)発案者。大学時代に事故物件に住んだ経験から霊感が強くなる。「怖い話」、「泣ける話」、「試し書き」の蒐集をライフワークとする。銚子...
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作家・脚本家・脚本プロデュース・企業ビジネスアドバイザー。「亜流の歴史」「霊伝説謎解き」を研究。早稲田大学第一文学部英米文学専修卒。12歳~年齢上限なしの作家集団「フライハイ! 」...
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