トンネル内でバックミラーを見てはいけない理由…知りたい…?

2016年10月30日

『全国の怖い話シリーズ』 広島の怖い話 『車を乗り変えてついてきた少女(三次市)』

~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
「車を乗り変えてついてきた少女(三次市)」
著書:寺井広樹・村神徳子
広島県の南北を走る道路がある。
尾道と松江を繋ぐ高速道路ができてからは、曲がりくねった旧道を通る人は減った。
元はその西側に平行に走ったこの道路が主流だった。
その道は国道54号線。脇には明治中期に作られた山道がある。
ここはとても夜に通れるような場所ではない。
出雲街道とも言われた道は江戸時代のまま今に繋がっているようだ。
そしてその54号線の島根との県境に「赤名トンネル」がある。
会社員のYさんは、三次市に住んでいて、わざわざ高速道路を使わず、昔ながらのこの道を通って島根に向かっていた。
明日朝早くに松江での仕事があるため、向こうのホテルに泊まる予定だった。
今までは昼間だったし、隣にだれかが乘っていたのでそう怖くなかったが、今日は小雨が降る夜。
噂の絶えない「赤名トンネル」に向かっていった。
道沿いに白い車が停まっていた。
多分、肝試しの若い連中だろうと思って見ていた。
俺も若いころは色んなところに行った。
白い服の女性がでるとか、子供を探しに来たとか。
ああ、考え出すと怖いからやめよう。

停まっていた車から数人が出てきた。女性数人が手を振っている。
バッテリーでも上がったんだろうか、深夜だしあまり関わりたくないが、ヤンキー共でもないし、若い女性なら修理も難しいし、助けてやるかと思って道の脇にYさんは車を停めた。
4人が立っていた。前髪をまっすぐに切った女の子が一人いた。割とかわいい。
雨が土砂降りに変わっていた。3人は傘をさし、その子だけ傘をささずに立っている。
「電話を借りていいですか?車が動かなくなって」

違う女の子が話しかけてきた。

「どうしたん?エンジンの故障か?」

よく見るとタイヤがパンクしていた。

「車が急に側道に寄っていったから、横もぶつけちゃって。パンクみたいで」

「JAF呼んだ方がええよ」

傘をさした3人は大学生くらいだろうか?
 
さっきの子だけもっと若く見えたが……妹かな?
 
と見回すがもういない。よく見たら車に乗っていた。後ろ姿が後部シートに見えた。
「ありがとうございました、JAF呼べました」

「今日、何人で乗ってきたん?」

「え?3人ですけど」

「もう一人、いなかった?ほら車に座って……」

「やだ!怖い事言わないで下さいよ!」
確かに今見るとその白い車に乗っていない。確かに見たんだが……。
JAFが来てタイヤを交換したので、Yさんは安心して自分の車に乗った。
挨拶をして、もう一人の女性が言った。
「ありがとうございました!お連れの人にもよろしくお伝えください」
お連れ?
 
ああ、横に積んでいる会社の荷物がそう見えたのか。
運転席に乗り込み、トンネルを越えた。
雨の降らないトンネルの中はまるで真空管のように、空気が停滞したように思えた。
(トンネル内でバックミラーを見てはだめだ)
前に友人に言われた事を思い出した。
とは言っても後ろから車が来ているか確認しなくてはいけない。
Yさんはサイドミラーで確認した。
サイドミラーに映る後部シートにさっきの女の子みたいな人影が座っているのが見えた。
「うわわ!」
声を殺して、トンネルを抜けるまで前だけを見て走った。
絶対にバックミラーを見ちゃいけない、見たら俺は死んでしまう!
「急がないで」
車の中で女の子の声が響いた。
「また死んじゃうから」
Yさんは泣きながらアクセルを踏んだ。
きっと俺の首あたりに手を伸ばしてきている。
ものすごく肩が重い。
あの子は俺の車に乗り換えたんだ!やはり霊だったんだ。
トンネルを抜けた後は、どこをどう走ったか覚えていないが、あるカーブのところでハンドルが持って行かれそうになった。
ブレーキをかけて、なんとかしのいだ。
「チッ」
舌打ちが聞こえ、急に体が軽くなった。 島根のホテルに着いてからはこんこんと眠った。
後から聞くと、山道で少女の遺棄事件があったとか、山道のカーブで家族の運転する車で事故死したとか、トンネルの近くでは色んなことがあったようだった。
事故なら、深夜の雨の日にスリップした車なんだろうとYさんは思う。
トンネルは真空管のように時を止めるのかもしれない。
それは亡くなった魂がまだ生きられると思いこんで、たどりつく霊界の境目なのだろう。

-終-
1980年生まれ。怪談蒐集家。「ホラ活」(ホラー活動)発案者。大学時代に事故物件に住んだ経験から霊感が強くなる。「怖い話」、「泣ける話」、「試し書き」の蒐集をライフワークとする。銚子...
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作家・脚本家・脚本プロデュース・企業ビジネスアドバイザー。「亜流の歴史」「霊伝説謎解き」を研究。早稲田大学第一文学部英米文学専修卒。12歳~年齢上限なしの作家集団「フライハイ! 」...
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