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【怖い話】こんな話を聞いたらもうゲームセンターに近付けない…

2016年10月29日

『全国の怖い話シリーズ』 神奈川の怖い話 『ゲームセンター(海老名市)』菊実仔

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
『ゲームセンター(海老名市)』
著書:菊実仔
突然ですが、みなさんは今の職場をどうやって選びましたか?
種類でしょうか?場所で選んだのでしょうか?
理由はさまざまだと思いますが、私は時々、その場所にいる未成仏霊を天に返すために、その職場を選ぶ……というか、自分でも予期せずにそうなってしまうことがあるのです。
そんな出来事の一例をご紹介しましょう。
歳になった年の秋に、私は小さいころからの夢だった「クレープ屋さんになりたい」という願いを叶えることになりました。
新聞の折込に入っていた、アルバイト募集のチラシにクレープの文字を見つけすぐに面接に行くことになり、見事に採用されたのです。
職場は小田急線での通勤でしたので何も苦になりませんでした。
クレープ屋の場所はゲームセンターの1階になり、事務所はビル内の地下でゲームセンターで働く人達と同じ所を使っていました。
クレープコーナーで働く子達はみんな同世代の女の子ばかりで、和気あいあいとした職場です。
クレープコーナーの子達全員があだ名で呼び合い、私は「なっち」と呼ばれていました。
2ヶ月ほど経って私もクレープ生地を破らずに焼けるようになってきたある日、ここで働いているあーちゃんが、

「ねえ、なっち地下の道具入れのこと知ってる?」

と聞いてきたのです。

「え? なに知らない。そこで何かあるの?」

と私もその話は初耳だったので聞き返しました。

「あのね、あの地下の控室の手前に置いてある所あるじゃん。あそこに女の人の幽霊が出るんだよねぇ……」

と言ってきたので私は、

「え!? 本当?」

とビックリして、

「なんで? 誰か見たの?」

とあーちゃんに聞き返したのです。

「私もよく知らないんだけどね、もうゲームやめちゃった人もみんな見たって言ってたよ物置の隅の所でうずくまって座ってるんだって……。だからゲームの人はみんな行きたがらないんだよ」

とあーちゃんは話してくれました。
地下の物置は私も控室のとなり奥にあるので存在は知っていますが、ゲームコーナーで使う用具入れなので、クレープコーナーで働く人が行くことはまったくありません。
でも、そこをチラッと覗くと中は真っ暗でした。
前の廊下の蛍光灯が照らすだけなので、不気味さが増して見えるのです。
その話を聞いてから3日程経って、今度はこのクレープコーナーで2番目に長い「みんみん」という子にそのことを聞いてみたのです。

「この前さぁ、あーちゃんから地下に女の人の幽霊が居るって聞いたんだけど知ってる?」
「知ってる知ってる。結構有名だよ」
「そうなんだぁ……なんでだろうね?」

と聞いてみると、そこにはこんな話があったのです。

「あのね、わかんないけど、ゲームのSさんいるじゃん? あのひとが連れてきたんじゃないかってみんな言ってるよ」

とみんみんが言いました。
ゲームのSさんとは、ゲームコーナーの方で働く代の男性で、この職場で1番古く、ゲームの主任を務めていた人でした。
みんみんの話の続きはこうです。
ある日、「この花きれいだよ」とSさんが控室に花を持ってきたのですが、それは空きビンに挿さっている明らかにどこかに置いてあった生花だったそうです。
それを不審に思った同僚が「それどこに置いてあった花なの?」と聞くとSさんは

「あそこだよ。道路の反対側の」

その道路の反対側というのは、つい3週間ほど前に女性が交通事故に遭い、亡くなった場所だったのです。
その綺麗な花は、亡くなった女性のために置かれた花でした……。
Sさんももちろんその場で何があったのか知っています。
その花を見た同僚が、

「気持ち悪いからやめなよ」

と言っても、Sさんは、

「きれいだからいいじゃん」

と、みんなの意見を聞かなかったそうです。
このことを話したみんみんは、

「ね!絶対おかしいよね。Sさんが女の人に憑かれちゃって地下に引き入れたんだと思うよ……」

と言っていました。
そして、その花は枯れるまで控室に置いてあったそうです。
みんみんは他にもクレープ内でかけている有線が誰もチャンネルを回してないのにいきなりお経に変わったり、次々と怪奇現象が起こることを教えてくれました。
この職場は霊感の強い人が多く、いろいろと視えてしまう人が何人もいたのです。
件のSさん自身も霊感が強く、みんみんに、

「今ここ肩に霊が憑いてたから祓ってあげたよ」

と急に言い出すこともあったそうです。
私は「とんでもない職場に来てしまったなぁ……」と思いましたが、しばらくの間、このことが話題に上がることはありませんでした。
働き始めて1ヶ月くらい過ぎた頃にクレープコーナーに新人の子が入ってきました。

「あのねぇ……地下の物置の所なんだけど……」

私もご多分にもれず、先輩たちから聞いたようにあの話を新人の子に話します。
もうこの話を新人に話すのは伝統になりつつありました。
この話を思い出していたある日、私は店長に呼び出されたのです。

「あの……話があるんだけど……。最近ゲームコーナーで人手が足りないからゲームでも働いてくれないか?」

とのことでした。
私は凄く戸惑いましたが、店長の「まじめに働いてくれてるからお願いします」との言葉に私も断りきれずに了承することにしたのです。
地下にはあの物置があります。

(けど、クレープとかけもちするんだし、ゲームで働く時間もそう長くないから大丈夫)

と言い聞かせてゲームコーナーで働くことにしたのです。
今までゲームで働く人とも控室が同じだったのでみんな快く仲間に入れてくれて難なく仕事をこなしていました。

(私はゲーム機をふいたりしてるだけだから、地下に行く機会はまずない)

そう思っていましたが……
ある日、私が3階のトイレを掃除しようと入ってみると、洋式便器が詰まっていて水があふれていたのです。
店長を呼んで、

「あの、トイレのすっぽんするやつないんですか?」

と聞きました。トイレ用具を探しても見つからなかったからです。
そうしたら店長は、

「あっ、あそこだ、地下の物置。物置にあったと思う」

と言ったのです。
私はそれを聞いて息を飲みました。

そして、私に、「一緒に地下に来て探してくれないか?」と言ったのです。

血の気が引きました。
私が一番行きたくなかった場所。
恐れていたことが起こったのです……。
店長はまだこの店に転勤になって日が浅かったのですが、「あのこと」を知ってか知らずか、私を誘ったのです。
その言葉に、「ちょっと……」と言う訳にはいきません。
何か理由があるかと聞かれたら、

「そこには幽霊がいるから」

としか言えませんが、そんなことはとても言えなかったのです……。
店長と一緒だからまだ大丈夫だろうと、

「はい、行きましょう」

と2人で地下のあの物置へと向かったのです。
暗いです。物置はいつものように暗く、店長が電気を点けてもそこは薄暗いのです。
みんなが言っていた女性がいるであろう場所の隅の方には目を向けないようにしました。
けれど……。
気配がするのです……。
そこに人がいる気配が……。
心臓の鼓動がドキドキと早くなっていきます。店長は何食わぬ顔で棚の上のダンボールを探しています。

その瞬間、私の肩が重くなり、とてつもない重力がかかったくらいの重さがして、その場でしゃがみ込んでしまったのです。

「大丈夫か?」
「はい……大丈夫です。少しめまいがして……」

と答えましたが、そう答えるしかありませんでした。
そうして店長とすっぽんをダンボールの中から見つけて物置部屋を出た私はその後もひどい疲れを感じていましたが、あの部屋へ行ったと同僚に告げることもなく、その日の仕事を終えました。
仕事が終わると母が車で迎えに来てくれました。
ちょくちょく迎えに来ない日もあったのですが、この日は遅番だったので来てくれたのです。

「お疲れ様」

そう言って車のドアを開けた母に急に、無性に怒りが込み上げてきたのです。
この日はいつも以上に疲れていて、口も聞きたくないくらいだったのですが、「なんでもっと早く迎えに来てくれなかったの?」とか、家に帰る途中で買い物をして行くと言う母に「なんで買い物なんてするの? 帰ろうよ」とかいちいち難癖をつけては、母を罵倒し続けました。
いつも母が迎えに来てくれる日は帰りに一緒にスーパーへ買い物に行ったりするのですが、この日はひとりで車の中に残って、

「私、疲れてるから行かない」

と怒りながら行かなかったのです。

(これはヒドイ疲れのためだ……)

と、どこからやってきたのかわからない激しい怒りに、こう名をつけました。
その後、1日の疲れを取るためにお風呂に入って私はひとり考えていました。

(母だって私のためにわざわざ迎えに来てくれて、考えてみれば車で待っていてくれたし……全然遅くないのに何であんなこと言っちゃったんだろ……)

(おばあちゃんのごはんとお父さんのお弁当の用意だってあるのに……)

と冷静になってみたのです。
そしてお風呂から上がった私は母に、

「お母さんさっきはごめんね……あんなに怒ったりして」

と謝りました。
そうしたら母は、

「あんた偉かったね。今、体から抜けていったよ」

と言ったのです。
何のことかわからなかったので、

「え?」

と聞き返したら、

「あんたが仕事終わって車に来た時からパッと見てわかったよ。女の人が憑いてるの」

と話した母はニコニコしていました。
その顔を見た途端、涙がわーっと溢れてきたのです。

「様子見て自分で出来なかったらと思ってたんだけど、気づいたね」

と頭をなでてくれたのです。それは初めて私が霊を成仏させた瞬間でした。

「なんかおかしいと思ってたんだよ。けど信じたくなかったんだ」と、今日あったことを話しました。

「実はね、菊実仔ちゃんがこのクレープ屋さんに勤める少し前も、菊実仔ちゃんの守護霊から、霊を成仏させる仕事をするから見守ってほしいと言われたんだよ」

と母は言ったのです。
母にはすべてわかっていました。わかっていて敢えて憑かせる。
これが霊能者の家系故の修行たるものなのでしょうか。

そういえば、私が怒りをぶつける車内でも母は「はいはい」と涼しい顔をしていました。
「私の言葉」ではないとわかっていたからなのです。そして母はこうも言っていました。
「どこからくるかわからない怒りや悲しみがきたらまず、自分の感情でないと思いなさい」と。
このことがそれからの私の教訓になり、今でも何かおかしいなぁ……と思うとこ
の教訓を思い出すようにしているのです。
こうして私はここでの「仕事」を終えたのです。
私はきっとこの女性を天国に返すためにこの職場に来ることが運命だったのでしょう。
それが本来の仕事であったと言っても過言ではないかもしれません。
そして、もうひとつお話ししたい事があるので、まだ少しお付き合いください……。
女性の魂を天に送って5日が過ぎていました。
その後、女性の霊を成仏させたことは言わずに、働き続けていました。
ゲームコーナーでの仕事も相変わらずしていたので、その日は2階にある麻雀のゲーム機をふいていました。
その時、左の耳元で男の人が、

「すみません」

と声をかけてきたので振り返ろうとしましたが、何かがおかしいのです。
ゲームセンターはゲーム機の音が結構うるさく、人の声が聞き取りづらい時もあるのですが、その声はハッキリと聞こえ、しかも、空気を通した声ではないのです。
頭のなかに直接聞こえてくるような声でした。
とっさにこれは人間じゃないと思い、恐る恐る振り返ってみると……。
案の定、誰も居なかったのです。
それどころか、お客さんもひとりも居なかったので、

「うわぁ……やっぱり……」

と思った私は、心の中で、

「くるな……くるな……」

と思って仕事を続けたのです。
そうしてクレープの仕事がある日にみんみんと一緒になったのですが、「あ、そういえばなっち、ここね、男の人の幽霊もいるんだよねぇ……サラリーマン風の。階段の所で足だけ見えたり、プリクラの下から足だけ見えたりするらしいよ。お客さんも見たって人、結構いるって」と、そんな話に、

(うわぁ……この人だぁ!)

と思った私は、もう懲り懲りと、その日に「辞めさせていただきます」と店長に言ったのです。
その男性はあの地下にいた女性が成仏したことを知って私に声をかけたのだと思います。

「すみません……」

の続きはきっと、

「私もお願いします……」

だったのかもしれません。
私がアルバイトを辞めた後、すぐにこのクレープコーナーは閉店し、私も二度とこの場を訪れることはありませんでした。
-終-
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神奈川県で先祖代々続く霊能者・占い師の家系に生まれ、幼い頃から霊能力に目覚めはじめる。10代の頃から占い師である母に弟子入りし、 占いブースで腕を磨く。2008年メンタルケアスペシャリ...
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