心霊スポットの怖い話。石碑は語る。「塚を壊したものは霊魔を受けて死に絶える」走り屋が遭遇した恐怖の体験談!!………オイカケテクル。

2016年11月06日

『全国の怖い話シリーズ』 埼玉の怖い話 『白旗塚の怪(所沢市)』

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
『白旗塚の怪(所沢市)』
著書:桜井伸也
埼玉県所沢市北野二ノ一二、小手指ヶ原古戦場、白旗塚、将軍塚と連なる場所で、昔から怪現象の噂が絶えない有名スポットでもある。
現在の埋蔵文化財調査センターの裏に、小手指ヶ原古戦場、白旗塚がある。

この一帯は、 鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて何度か合戦が行われた場所である。
鎌倉幕府の滅亡ともなった、元弘三年(一三三三年)上野国新田庄を本拠地と定める新田義貞が鎌倉攻めを行い、この小手指ヶ原で幕府軍と交戦、徐々に幕府軍は抗しきれなくなり、五月二二日に陥落という記録が残っている。
古戦場の碑から西へ細い畑中の砂利道を数十メートル行くと、白旗塚に辿り着く。
新田義貞がここに本陣を張り、源氏の旗印である白旗を立てたという伝承からそう呼ばれるようになったという。

見た目はこんもりとした木々の小さな丘で、その中に石碑と浅間神社の石祠があるといった経緯から、人口塚の可能性が高い。
塚に登る階段の近くに石碑があるのだが、そこには、「塚を壊した者は霊魔を受けて死に絶える」 というような内容の文が刻まれており、雰囲気はあるのだが、石碑自体は新しい。
心霊スポットとして有名になってしまったので、悪戯や破壊行為が頻繁にあるのだろう、 抑止力としての意味もあって、近年になって設置されたと思われる。

実際に行ってみた感想としては、近辺に住宅も沢山あり、古戦場という趣は希薄で、それ程おどろおどろしい感じは受けない。
史跡、名所といった印象が強く、明るいうちは間 違っても怖い感じはしなかった。
ただし、機械系の不具合、故障、誤動作は頻発したので、機械系に影響が出る特色がある場所なのかもしれない。
心霊スポットには私的な分類で、大きく二つある。
一つは「霊的スポット」で、これはその名の通り、声、影、足音等の生物的特徴がメインの怪現象が起こるスポットの事である。
もう一つは「磁気的スポット」で、機械や物、周囲の建物に影響が出て、それが怪現象に見えるスポットの事である。
その場所で殺人があろうが、自殺が多発しようが、その現象の発生方法がどちらかに寄る事があるので、スポットになった成り立ちは単一方向性ではなく、様々な他要因と絡んで、バランス上過多な方向に発生するのだろうと思われる。
二つが混ざったような場所もあるにはあるのだが(新潟のホワイトハウス等はそう感じた場所の一つであった)、ここでは分かり易くする為に二つにしておく。
ここまで読まれた方は、何だ、異変が物に起きるなら、撮り逃す事も無いし、さぞ沢山収穫があったであろうと思われるかもしれないが、撮影機材にも異変が起きるので、実は 何も残らない率が高く、取材する方にとっては迷惑な事この上ない。
私自身が霊能者的力があるのであれば、古戦場で亡くなった者の念を感じて、恐怖するのだろうが、こちらにはそんな力が無いので、取材をしていられるという側面があり、こうなると、ただ単に何も撮れない場所に、好き好んで長時間居る人になってしまうのだ。

記録として残っている物も、煙のような物が写った写真が数枚(撮影時、喫煙者はおらず、周囲に霧等も出ていなかったのは確認している)、電源の調子が悪く、途中で急に途 切れる動画が約一時間弱程度、という地味な成果で、取り立てて記載するべき現象には、残念ながら遭遇出来なかった。
まぁ、普段の取材は殆どが何も無く、物好きの散歩といった感じで終わる事が殆どなのだが、名前がある有名スポットで何も起こらないというのは、いつにも増して、非常に徒労感が強く、がっかりする。
しかし、この場所がスポイルされた場所だと言いたいのではない。
私はこの場所に合わなかったというだけで、私の後輩が恐ろしい経験と、写真で記録を残した事がある。
後輩のSはバイクが好きな男で、高校生になるやバイトで金を貯め、カタログを眺めては、あれを買いたい、これを買いたい、と嬉しそうに話していた。
彼が高校一年の時、初めてバイクを購入した。
待望のバイクだった為、色々な所に乗って出かけていたのだが、めぼしい目的地が無くなると、私の所に来ては、 「先輩、どこか無いですか?」 そう言って、両手を「うらめしや」の格好にしているのだった。

私は、本当に危険な所は外して、雰囲気だけ味わえる所を紹介していた。
その中の一つ に、白旗塚があった。
Sは早速三人の友人を誘い、週末に出かけたという。
皆バイク好きで、年はバラバラだったが、仲の良い走り屋グループだった。
年長のOさんが音頭を取って、少し離れた所にバイクを停め、歩いて向かった。
時間は二四時位だったという。
見た目はそれなりに整備されており、植込み等もきちんと刈り揃えてあるので、それ程怖いという感じも無く、のんびりと皆で見て行ったそうだ。

「明かりが少ないから暗いけど……そんなに怖いという感じじゃないかな?」

Oさんが皆を見渡し聞いた。他の仲間も頷いている。

「周りも畑ばっかだし、何だか有名だってのが信じられないですね……」

Sがそう言って、丘の入口にある階段を上り始めようとした時、Oさんが肩に手を掛けて止めた。
急に何かと思ってOさんを見ると、指で上を指し示した。
見上げてみると、階段を上がりきった平地に、数人の影が見える。
「先客か……」
Sはそう思って、階段を下り、先客の一団とぶつからないように、仲間と道を少し外れた所でコーヒーを飲んでいた。
こうした心霊スポット巡りをしていると、どうしても他の肝試しをしている連中と出くわす事がある。
そうした場合は、お互いがその場所を楽しめるように、余計なトラブルを避ける為にも、S達は少し間を空けて、場所を譲り合うようにしていた。
しかし、いつまで待っても帰って来ないので、Sが痺れを切らして様子を見に行った。
相変わらず、一団は階段上に固まっている。
少し階段を上ると、話し声が聞こえて来た。

「あちゃ〜と思いましたね、喧嘩してるんですよ。何か三、四人が二グループに分かれて言い合ってる。
結構低い声で言い合いしてるのがうっすら聞こえてくるんで、これはちょっと早くして下さい、なんて言えないじゃないですか?」

Sは困って仲間に相談した。
もうちょい待ってみよう、折角来たんだから、というのが皆の意見だった。
あまりに喧嘩が酷くなるようであれば、巻き添えを食わないうちに帰ろう、という事で話がまとまった。
Sは階段の所に戻って、また様子を窺った。

さっきより言い合いは酷くなっており、ハッキリとは聞き取れないが、小突き合いのようになっている。
声を殺してはいるが、音が怒気を孕んでおり、深刻な様子が伝わってくる。

「これは、Oさん達に、別の場所に行きましょう、と言うべきだなと思いましたよ。殴り合い寸前て感じで、ヤバいなと思ったんで……」
しかし、その直後にSは異変を感じ取る。

「俺んち、爺ちゃんが同居なんですよ、で、時代劇ばっか見てるんですねよ。親父が誕生日に時代劇専門チャンネルとかいうの契約したんですよ。だから、俺も自然と時代劇のセリフに詳しくなるんですよ!」

Sが言いたい事はよく分かる。
私自身が子供時分から時代劇が好きなので、古い言葉使いが勝手に出てくる事があったからだ。
Sが戻ろうと思った時、階段の上、背後からハッキリと聞こえた言葉は……。
「慮外者め!腹を切れい!」
無礼な奴だ、という意味で、時代劇ではまま聞く言葉だ。
えっ?と思ってSが振り返ると、片方のグループがバタバタ倒れていき、残りのグループが何かでザクザク刺していたという。

それを見て、Sは思いっきり駆け出して、Oさん達の所に飛んでいき、引っ張るようにして仲間を連れてバイクまで戻った。
とにかく走り出して、先に行ってしまうので、残りの仲間が追いかけるようにして付いて来た。
目に付いたコンビニに飛び込んで、震えていると、仲間が追い付いた。
「おいどうした!何があった!あいつらに喧嘩売られたのか!?」
Oさんが心配して聞いてくる。
Sはすぐには答えられず、どう答えていいか考えあぐねていた。
まさか古戦場の跡地で武士の霊が処刑している所を見ました、なんて言って、誰が信じるだろうと思ったという。
いい所、何盛り上げてんだよ!と笑われるか、頭が大丈夫かと疑われるかが落ちだろう。

Sは考えて、逃げ出す決め手となった、最後に聞こえた小さい声の事だけ話そうと思った。
これなら、変に取られる事もないと踏んだのだ。

「あの……上の奴ら、喧嘩してて、中の奴が、下にもいるぞ!って言ったんで……」
「本当か !?いや、それは危なかったなぁ……よく逃げて来られたよ!」

Oさんが助かったという顔をして、コーヒーを差し出してくれた。

「結構、俺達の所まで、ガチャガチャ聞こえて来てたからな、何やってたんだ?」

Sは何か長い物でザクザク刺していた音を思い出し、身震いした。
あのまま、ぼうっと 居たら自分が刺されていたかもしれない。
そう思うと、なんて事無い場所と思って見回っていたのが信じられない思いだった。

その時、仲間の一人が声をあげた。
「うわっ!何だよこれ!誰だよちっくしょう!!」
皆で見てみると、仲間のバイクに大きな細い傷が付いている。
金属のような物で引っかいたような痕があった。
皆バイクを大事にして、磨きあげているメンバーばかりなので、こんな傷を放っておく訳が無い。

「おおっ!俺のもだ!誰だよ!?停めといた時かなぁ……」

他の仲間が自分のバイクを見に行って、やはり驚いている。
思わずSもOさんも自分のバイクに走って行った。

「おい頼むよ!この前変えたばっかだぜ!おいおい……」

Oさんが切り裂かれたシートを見ながら呻いている。
Sのバイクは言わずもがなで、タンクの部分に傷があった。
他の仲間は、誰かの悪戯で、十円玉か何かで傷を付けられたように思っているが、Sはその正体が何であるか、確信に近い思いがあったので、何も言わずに傷の写真を携帯で撮ったという。

どうにも気味が悪くなって、もう帰ろうと仲間を説得し、家に戻ることにした。
やはり行った人間によって、起こる現象も変わるようだ。
私の時には、けんもほろろな扱いだったのに、Sの時には随分と色々起こったものだ。
しかし、Sの話には続きがあった。
バイクの傷を直す為に、なけなしの貯金をはたく覚悟をした。
どっと疲れたので、風呂に入り、寝てしまおうと思ったのだが、お爺さんがテレビを見ているらしく、声がうるさい。

Sの部屋の廊下を挟んで対面に祖父の部屋があったそうだ。
祖父は毎日好きな時代劇鑑賞と、朝夜のウォーキングが日課で、朝は早くから録画した 番組を見ている事があった。
イヤホンが嫌いなので、音を出して見ているのだという。
普段なら、イヤホン派で外の音が気にならないSも、この日は音楽を聴く元気も無く、ぐったりとしたまま、ベッドに潜り込んだ。
しばらくウトウトとしていたのだが、どうにも寝付かれない。
爺様が朝早くから時代劇を見ているようで、声がうるさい。
イヤホンをしていないと、こんなにうるさいのか、と思いながら携帯を見ると、午前五時を少し過ぎた所だった。
音を下げてもらおうと、廊下に出るが、祖父の部屋からは音は聞こえない。
さっきは確かに聞こえていたのに、今は家中が静まり返っている。

嫌な感じを覚えながら、玄関に行くと、祖父のジョギングシューズが無く、既にウォーキングに出かけたようであった。
では、あの声は何だろうと思うと、玄関横にあるトイレの方からボソボソと音がする。
そっとトイレのドアを開けると、誰も入っておらず、簡単に開いた。
何となく忍び足で室内に入り、耳を澄ますと、トイレの換気用の窓の向こうが音の発生源らしい。
指でそっと窓を開けると、すぐ外にある駐車場が見える。
父親の乗用車の向こうに、Sのバイクが停めてあるのだが、その周りに人影がある。
泥棒か悪戯か!と色めき立ち、窓を開けて怒鳴ってやろうと思った瞬間、
「のがさぬぞ……」
人影の中でもひと際大きな影の方からそう聞こえ、窓を全開にしようとした手を思わず空いた手で押さえた。
追いかけて来やがった!と思った瞬間、寒気がして、窓をそっと閉め、部屋に戻ると、布団を被って帰れ帰れと念じていたらしい。
いつしか寝入ってしまい、目が覚めるともう午後二時過ぎで、祖父が帰って来ていた。
何か変わった事は無いかと尋ねたが、何も無いという返事だった。
Sはその後、そのバイクに乗る気がせず、すぐに売ってしまった。
後で祖父に聞いた所、彼の家系は古い武士の血筋だという事だった。


-終-
ゲーム開発者・イラストレーター・怪談家。幼少時からの怪体験を経て、心霊現象に興味を持ち、怪談・心霊写真の蒐集を始めて25年以上が経つ。怪談家:関谷まゆこ、声優:保志乃弓季とともに、...
続きを読む

コメントをどうぞ!