shiroihon-thum

【とってもためになる体の構造の話】この人の文章も読みやすいし何より面白い

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
白異本 より
「白い人との出会い」
著書:外薗 昌也
ミヤビさんに会ったのは今年の一月頃だった。 
その日も朝から、僕が加入している某SNSで【黒異本】【赤異本】のエゴサーチをしていると、ある呟きを見つけた。

>外薗昌也先生の『赤異本』で何が一番怖かったかというと、私は『腐女子地獄』が怖い。>その理由を記そうと思う。

「ん?」と、思った。
「なんだこれは?」 と、驚いた。

普段よく目にする軽い呟きではない、論文調の知性そして重さを感じる呟きだった。
気になった僕はその人のページに飛び、プロフィールを見た。 名前は雅(ミヤビ)。 
茨城県の某総合病院で看護師をしておられる若い女性だった。 自画像も貼られていた。 拡大して確認するとこれが大変な美人さんで驚く。
『腐女子地獄』とは僕の最初の怪談本【赤異本】に書いた実話怪談の一遍だ。

内容は、漫画家仲間づてに紹介されたあるBL漫画家さんの怖い体験談で、熱烈なファンの女性がアシスタントとして仕事場に入り込むのだが、先生を想うあまりに他のアシスタントに嫌がらせを繰り返した挙句解雇され、逆恨みから自分の経血を使った呪詛グッズで仕事場を呪う、という、なんとも陰鬱極まりないお話である。(僕はその呪詛グッズを直に触っている)
にしても【赤異本】が出版されたのは二年前、それが今頃ツイートされているのだ。  どういう事だろう? と、いぶかしむのは当然だろう。

呆然としつつも僕はミヤビさんの過去ログを辿ってみた。



『血』の話からはじめよう。 以前ツイートで書いたが、私は怪談でよく見る「真っ赤な血が吹き出していた」という表現が怖くない。
『吹き出す真っ赤な血』は私にとって『怪異』ではないからである。

血が赤いのは酸素を含んでいるからであり、血が酸素を含んでいるということは血液が   
呼吸により酸素化されているという事だ。 つまり対象物は『呼吸』をしている生命的なわけである。

更に『血が噴き出す』時点でそれは動脈血を意味し。 動脈血が噴き出す、という事は血圧があることを示す。 血圧があるという事は、心臓のポンプ機能が働いているということだ。つまり心臓が動いている。 生命的なわけである。
これらを踏まえると『怪異』と『血』が私にとって恐怖足り得るには呼吸していない事と心臓が動いていない事を表現してもらわないと駄目なのである。
つまり『どす黒い血(酸素を含んでない血)が有り得ない(でも噴き出さない)くらい流れ出ながら動いている人間』が怖いという事になる。

だがそれはあくまで『噴き出す真っ赤な血』が怖くないという事であり、『血』が怖くないわけではない。
テレビなどに映し出される事故現場の血痕にぞっとする人間は多いはずだ。 私もそうだ。 匂いも届かず、感染のリスクもないそれになぜゾッとするのか?
『血』が『臓器』だからである。

血液は実は『液体』ではない。 赤血球、白血球、血小板という極小の組織の集合体であり、小さな小さな『固体』なのである。
体内で生産され独自の働きをもつものは『組織』とは呼ばれない。『臓器』という。

つまり私には、テレビなどに映し出される事故現場の血痕がぶちまかれた臓器に見えるのである。 気持ち悪いの一言につきる。 そんな血液の中でもっとも私が『怖い』と思うのが、『月経血』である。
人間には、糞尿のような排泄物ではなく『ほぼ捨てることを前提にされた』組織がある。 髪や爪といったものがそれである。
しかし、それら髪や爪にもちゃんと遺伝子という自分の情報が備わっており、やろうと思えばそれから複製――クローン作成も可能なのである。

つまりそれは、言葉通り自分自身なのである。
そんな中でより存在の大きいのが『月経血』である。

前述したように、血は『臓器』である。 なので、爪や髪のような棄てる『組織』ではなく、棄てる『臓器』になる。 こういう表現が正しいのかどうか分からないが、格が違う。 格段におぞましいのである。
『月経血』は女体が子供を育てるための『胎盤』に変じる役割を持っている。

本来『育む』存在な訳だが、大概において毎月胎児を得られず崩れ流れる破棄物である。 だが、胎児を育むため『胎盤』に姿を変えても胎児が出れば流れ出る。
明らかに『臓器』の『なり』をしたそれはその後どうなるか?
棄てられる。 破棄物である。
形をなして役に立とうが液体として面倒な行事と扱われようが、棄てられる存在には変わりない。つまり棄てられる運命の臓器という訳だ。 残酷な理ではないかと思う。
『月経血』に振り分けられる『血液』は、どんな気持ちなのだろう。

例えば心臓移植手術だ。
心臓移植された人間が心臓を提供した人物の食の好みに似る事がある、という。 たまに記憶まで移ったというオカルトじみた事象まで報告されている。

私はそれを不思議とは思わない。
なぜならその心臓はその食で長らく栄養摂ってきた心臓なのだ。 自分の居る場所が変わろうが欲しいと思うのだ。その栄養が。
なら同じ『臓器』である血液も同じである筈だし、そういう『好み』が『臓器』に移るのなら煮えたぎるような『思い』もまた刻まれるんじゃないか? と思うのだ。
好き、嫌い、愛しい、憎い、悲しい、苦しい、恨めしい――刻まれた記憶というか記録を孕んだものはいわば自分以上に自分である。
『赤異本』の『腐女子地獄』では『月経血』を使った呪詛グッズが登場する。 恐ろしい代物だと思い恐れおののいた。

以前ツイッターではこう書いて締めた。
まあでも何が怖いって、それが本当に怪異を起こすとかそういう事じゃなく、毎月そういうものを無意識に棄てている自分も含めた大多数の女性の強さというか鈍さがあってこそ世の中が正常に健全に運営されていく。――という危うさが怖いのかもしれないと思うようになった。 しかしこれでは私が感じる『腐女子地獄』の怖さを充分表現できていない。

繰り返すが、『月経血』は、形をなして役に立とうが、液体として面倒な行事として扱われようが棄てられる運命の臓器である。
『腐女子地獄』のM子はそれを呪いの形代に選んでいる。
そこに、猛烈にタチの悪い気軽さを感じるのである。 そこには、トカゲを殺して目玉を抉り、蛙を裂いて肝を剥ぎ、ナメクジを集めて煮て作る『呪いの深刻さ』がない。
「呪えたら呪えたでいいし、ダメならダメでまあいいや」的な『呪い』ではなく『イヤガラセ』臭が強いのである。
そうして出来上がった呪いの形代は、呪う方にとって特に重要な代物ではなく、呪われる方にとっては汚物以外の何ものでもない。

つまりどう転んでも『廃棄物』なのである。
人の身勝手な怒りや憎しみの刻まれた『役に立とうが立つまいが棄てられる運命の臓器』は、棄てるついでに気軽なイヤガラセという『呪い』に使われ、またも『役に立とうが立つまいが棄てられる運命』に身を落とされたのである。 それの孕む禍々しさたるや言葉を見つけられない。
この呪い『いいかげんに始まった』感が強いのくせに『終わる気がしない』感がぬぐえないのである。

……こわい。

そういうものを生み出すことのできる基礎を毎月胎に溜める女という生き物が、同じ女という生命体ながら未知の不気味に思えてならない。
そしてそれを毎月無意識に棄てている大多数の女性の鈍さがあってこそ世の中が正常に健全というこの危うさが、むしろ不健全に思えるのである。
やはり、考えずにいられない。

『月経血』に振り分けられる『血液』は、どんな気持ちなのだろう?
外薗先生の『赤異本』で何が一番怖かったかという話をした。

改めて言おう。 私は『腐女子地獄』が一番怖い。

……すごくこわい。


読み終わり、しばらく僕は呆然としていた。
文章上手い。
それは、ぐいぐいと読まされてしまうリズム感と知性と感性が融合した独特の文体で書かれた『血』に纏わるエッセイだった。
最後の『すごくこわい』があえて漢字を廃しひらがなだけで書かれており、効果的に作者の心情を吐露している。
「なんだこの人? いったい何者だ? ていうか……」

――なんかあった?

ここまで『血』に関して熱い文章を書く人だ。
それには何かただならぬ事情が……とんでもない狂気やトラウマが潜んでいるかもしれない、と警戒した。 黒い人に振り回された続けた日々をふと思い出す。
またあんな目に遭うのは正直懲り懲りなのだが、好奇心に負け僕はふらふらと彼女をフォローしてしまった。

その翌朝、再びSNSを開くと、ミヤビさんも僕をフォローしてくれていた。 
見るとDMも付いていた。 フォローした挨拶だろうか? 
DMを使ってよくファンの人と情報交換する。 これなら他の人から見られないから安心して個人的なお話が出来るのだが、あのエッセイを書いた人物だ。 とんでもない事が書かれているかもしれない。
覚悟を決めそっとフォルダを開くと、そこには僕の危惧とは裏腹に丁重な挨拶文が書かれてあった。 僕の漫画が好きだった事、そして怪談本も楽しく読ませていただいた事等々が女性的細やかな心配りを滲ませる美しい文体で書かれてあった。

『血』に纏わるエッセイとは別ベクトルの落ち着いた大人の女性の文章に、僕はほっと胸を撫で下ろす。
「よかった。 ちゃんと常識のある普通の人だ」
安堵した僕は丁重に挨拶の返事を返す。 すると、すぐにDMが返ってきた。
筆まめな人だなー、と感心しつつフォルダを開いた僕は、えっと声をあげそうになった。

「実は私も怪談集めてます」 

病院勤務で知り合った周囲の人々から怪異話を集めるのが趣味で、いつの間にか五十本近く溜っているのだという。
そして、そのストックの一遍が書き添えてあった。



【盆の海】

母方の親戚が漁師をしているという都内で運送業を営むYさんから伺ったお話である。  
船が好きなYさんは子供の頃、親戚の家に行く度に乗せてもらい、近場を一周するのが楽しみだった。
船というのはもちろん漁船である。燃料費もかかるだろうに気軽に乗せてくれていた。

しかし、盆だけはどうしても船を出してくれない。なぜかと訊くと、
「盆は海に入ったらあかん」の一点張りで聞く耳をもってくれない。
しかし小さな子供に盆の行事はつまらない。Yさんが根気よく粘ると、叔父は重い口を開いた。
「盆は海に入ったらあかん。おっちゃんも昔オカンに言われた。死んだ人が帰ってきてるから連れて行かれるから言うて。おっちゃんも、そんなんただの迷信や思てたし、先祖がそんなことするかい、思とった。クラゲにかまれるから、脅しとるだけやと思とった」
そこまで言うと急に叔父は神妙な顔つきになった。
「でもな。あれは、おっちゃんが小学校4年生ぐらいのときの盆や。残暑が厳しいて、あほみたいに暑うてな。汗ダラダラかきながら歩いとったら、海からなんか声が聞こえてきたんや」
「声?」
Yさんの問いに叔父は、うんと小さく頷いてから続ける。
「見たら海ん中にようさん人がおる。楽しそうに笑て泳いどんねん。そこから、おっちゃんを呼びよんや」
〈暑いやろ、入りー〉

急に空気がひんやりと冷たくなったような気がしてYさんがぶるっと震えたが、叔父は気づかぬ様子で更に続ける。
「ニコニコしとんねん。確かに暑かったし、濡れても家近いし、入ろかな思たんや。でも、盆は海に入るなて言われてるし、入ったんばれたらオカンに怒られるなと思て断った。それでも、まだ呼びよんや」
〈暑いやろ、入りー〉
「なんか、ちょっと気味悪うなってな。でも……」
〈早うおいで、気持ちええで、大丈夫大丈夫〉
海ん中におる人みんながそうやって言うんや。気がついたら海ん中におる人みんながおっちゃんを見とってな。その目がな……」
そこまで話すと叔父は急に声のトーンを落とし、囁くような声で言った。
「その人ら一個も瞬き(まばたき)せえへんねん。怖なってな。逃げ出してから、気がついたんや。あの人らみんな、海ん中におったのに、服着とったなあ、って」
Yさんの叔父は神妙な顔で、
「盆は海に入ったらあかん。死んだ人が帰ってきてるから連れて行かれる。連れて行くんは先祖やない。全く知らん死んだ人間や」
と、結ぶと、そのまま黙り込んでしまった。
それ以来、Yさんが盆に乗舟をねだることは勿論、海に近づく事もなくなったという。



短く簡潔に書かれた海の怪異譚。 素人が書いたとは思えない完成度に思わず唸る。 
それに完成度だけではなかった。 ミヤビさんの人柄なのか? それとも看護師という職業によるものなのか?  文章に不思議な清潔感が漂っているのだ。
 
色で言えば《白》
「黒い人と正反対、白を連想させる人だな。 本のタイトルを白異本に決めたせいで呼んじゃったかな」
などと冗談も出てくるようになり警戒を解いた僕は、その場でミヤビさんを僕のもう一つのSNSにご招待した。 
僕の呼びかけに快く応じ、ミヤビさんはその夜の内に僕のSNSに加入してくれた。
ここは仲間だけ閲覧設定の長文も載せられるSNSである。 ここでなら彼女のストック怪談を切れ切れではない状態でゆっくりと味わえる。

さっそく僕の怪談仲間にもミヤビさんを紹介し、数人で閲覧し第三者の意見も交えて客観的視点も入れられるようにした。
翌日から次々と夜勤の暇な時間を利用しては送られてくるミヤビさんの怪談は、我々を大いに驚嘆させ楽しませてくれるようになった。 
怖いだけでなく、笑える話あり、ほろりとさせる話あり、不思議な話あり、とバラエティーも豊かだった。
これなら次の怪談本も楽勝だなあ、と僕は無邪気に喜んだ。
いつの頃からか、僕は彼女を【白い人】と呼ぶようになった。 彼女もそう呼ばれる事を喜んでいたようだった。
皆で頻繁にコメントし合い、時には脱線してよく笑った。

全てが楽しく順調だった。 しかし……今思えば順調過ぎた……薄気味悪いくらいに順調過ぎた。 もっと注意すべきだった。

ある日を境に白い人から怪談が送られてこなくなった。
チェックすると足跡もない。 つまりSNS自体に来てないのだ。 気になった僕はもう一つのSNSも見てみたが、こちらも三日前から更新されていなかった。
まだ知り合って日が浅く、どんな生活サイクルなのか知らない。 おそらく仕事が忙しいのだろう、と思い放っておく事にした。 互いに選挙権もある大人だ、干渉し過ぎはトラブルの元である。
しかし、待てど暮らせど白い人がSNSに訪れる事はなかった。 あの人本当にいたんだろうか? などと思い始めた頃、ようやく白い人が姿を見せた。

「今日はいい天気です。 久しぶりに更新します」

おお、元気そうだ! と、安堵しつつ過去ログを見ると姿を見せなくなってから、数えると一月半以上が経っていた。
「さて、四十九日も過ぎたと思われるので、9月の症例を話しますね」
――四十九日?
僕は呆然としながらも続きを読み始めた。



これはいつもの『集め話』と違って文体を変えてます。 それについてはまたあとで触れますね。 とりあえず、この口調でいっちゃいます(笑)。

二月二日、私は準夜勤務でした。 準夜勤務というのは夕方から深夜一時くらいまで働く中途半端な夜勤で、その日もいつも通り午前中は身体を休め、午後三時半頃病棟に入ったわけです。 するとあまり楽しくない音がする。
〈カシュー カシュー〉という呼吸器の音と、続いて〈ポーン ポーン〉という危険アラームの音がしたんですね。
それだけでもう、重たい新入院が来てるなあ、と分かるわけです。 おまけに病棟の空気もおかしい。 〈じとっ〉とした雰囲気といいますか、〈ああ、めんどくさいの来ちゃったなあ、もう〉みたいな投げやり感といいますか、ここで〈あ、入ってきたの『不審死』だ〉と察したんです。

新入院の患者は三十代後半男性。 入院理由は『溺水によるCPA蘇生後』とありました。 車でダム湖に突っ込んだんだそうです。
(※CPAとは『心肺停止』という意味で、『CPA蘇生後』というのは一度生命徴候を離脱した人間が救命措置により心拍を取り戻した状態につけられる診断名です)
既婚者であり子供が二人いますが別居中にて現在は独り暮らしとの事。
以前より妄想障害で入退院を繰り返していた、という彼は歳をとるにつれその症状の悪化とそれに伴う入院回数が増し、社会生活が困難になっていったそうです。
収入が危ういうえ出費が響き、介護という精神的苦痛と子供への影響を危惧した妻は離婚を提案。 しかし本人が納得せず話が進まないまま長く月日を浪費。
やっと離婚前提の別居が受け入れられ別居が始まった次の日の二月二日、彼は一人車に乗り、冷たい湖水に向けてアクセルを踏み込みました。
休日で天気が良かったのも幸いしてか目撃者が存在し、すぐに警察に連絡。 車は迅速に引き上げられましたが救出された彼はすでに多量の水を飲んでおり溺水、心肺停止状態にありました。

救急隊員により救命処置を施されつつ収容病院を片っ端から当たりましたが、すでに心肺停止しているうえ経緯も経緯ですのでなかなか受け入れてもらえず、結果、現場からは遠方にあたる当院に搬送。 着院直後より薬剤やカウンターショックによる蘇生術が全力で開始されましたがなかなか蘇生に至らず。 心臓はぴくりとも動かず心静止もしくはVF(心痙攣)のまま三時間以上が経過。
もうこれはどうしようもないと判断したドクターは家族に最終通告を兼ねた面会を促しました。 ですが、妻と妻の両親に「残念ですが、これ以上の救命処置は虐待に値します」と説明をしていた時、患者の実の弟が病院に到着。 処置室に飛び込んできた途端に心拍が再開します。

ありえない状況です。
心臓を助けるためとはいえ、健常者なら死亡するほどの劇薬投与量と電気ショックを与えられた心筋はぼろぼろの筈であり、停まって三時間以上も経過している状況下ですのですでに壊死が始まっているはずなんです。
……なのに動いている! しかも洞調律という正脈で。
とにかく自己心拍が再開している時点で彼は『死亡認定』されませんので、集中治療室、つまり私の働く職場に入院という運びになりました。
意識レベルはJCS三〇〇(要は何の反応もないという事です)。 瞳孔は散大。対抗反射なし(脳死状態です)。 自発呼吸なし(小脳や延髄が機能していないという事です)。 少量だけ出ている尿は真っ赤(ミオグロビン尿といいます)。
心臓が動いている、というただその一点以外の彼のすべては『死』の徴候そのものです。 とんでもない量の昇圧剤が持続点滴中。 しかしそれでも血圧は低迷中。 四肢はチアノーゼで黒く変色し、末梢に至っては壊死しはじめている。 呼吸器の強制換気モード設定も規定外。 肺が水浸しだから肺胞が破裂してもおかしくないくらい圧をかけないと換気がままならない。 分秒単位で血液データが悪くなっていく。
誰の目にも、長くないのは明らかでした。

その日、夜勤リーダーだった私は責任者としてその患者を受け持つことになり、気が重いなどと言ってもいられずベットサイドに行きました。
患者を一目見た瞬間、私は異和感を覚えました。

――――綺麗すぎる!

身体が綺麗すぎるんです。
彼がここに来るまでの経緯を思えば、間違いなく彼は体内すべてが水浸しであり、それによる浸透圧の崩壊で〈モコモコ〉にムクんでいる筈なんです。
少なくとも眼球は浮腫で膨れあがり、腹部は〈きんきん〉に張り詰めて硬くなっていないとおかしい。 そして口や鼻、もしくは耳からもとめどなく水が溢れていないとおかしいんです。
なのに、瞳孔確認が実に容易にできてしまうほど目はすっきりしているし、お腹も若干張ってはいますが浮腫の印象が薄い。 顔から流れ出るものはなく、試しに吸引してみましたが全くといっていいほど何も吸引できない。
ショック死すると水は飲みませんので、そのせいか? とも考えましたが肺の事を考えると矛盾する。 一応レントゲンを確認すると胃はおろか小腸まで水で〈パンパン〉になっている。 前述したように、彼は呼吸器で尋常でないほど胸腹部に圧迫をかけている状態なんです。

普通に考えて、呼吸器官に押され、消化器官の内容物が上からだろうが下からだろうが押し出されないのはどう考えてもおかしい。
なので、私はすぐさまドクターにその事を伝え、マーゲンチューブという胃までの管を入れる指示をもらい挿入しました(これは胃内容物を体外に排出するもので、嘔吐による誤嚥を防ぐために使われたりするものです)。
でも、何も出てこない。
「胃壁に管先端が当たってるんじゃないの?」というドクターの指摘により二度ほど入れ直したり、シリンジで押してみたり引いてみたりましたが、やはり出ない。
最終的にはレントゲンまで撮り確認しましたが、管には問題が見つからず、異様な状況になりました。

「出したくないんだろう」
冗談まじりのドクターの言葉に不謹慎さを覚えながらも、バイタルチェックなどをしているとインターホンが鳴りました。
出ると、患者の弟さんが面会したいとの連絡でした。
こんな状況ですから異例として面会時間がフリーになっていますので「どうぞ」と応ると、痩せ気味の真っ黒に日焼けした男性がICUに入ってきました。
黙って深く頭を下げ、ベッドの横に立たれたので、邪魔をしてもいけないとその場を離れようとしたんですが、
「看護婦さん」 と呼びとめられ、
「兄は本当に頑張り屋だったんですよ」 と話し始めましたので、家族の話を聞くのも重要だと思い聞く姿勢をとりました。
「昔から凄く我慢強くて、なんでも一人で抱えこむんです。 嫁さんのこともそう。精神病の嫁さんずっと介護しながら仕事して子供育てて…今もこんなんになって頑張ってる。もういいから、頑張らなくていいから、って言ってやりたい」
「え?」
聞いていた情報と真逆の情報に一瞬混乱しましたが、まあそれはよくある事です。
一方から見たら一方に非があると思う事も見方を変えたらまた違う光景が見えてくるもので、とくに不仲な家族関係となるとそれは顕著です。

患者自身が精神疾患で家族を困らせていたか、または彼の妻が精神疾患で家族を困らせていたかは看護師の私には判断できませんし、また知る必要もないことです。
看護師にとって重要なのは、彼がこういう状況下にいるという事実、それだけなんです。 しかし実の弟さんですから、身内贔屓な視点もあるでしょうし、否定も肯定もできない身ですが『家族へのフォロー』が義務付けられている立場として動揺を隠し「大変でしたね」と曖昧な相槌でやりすごしました。 するとその時……、

――――患者さんの血圧が少し上がったんです。

救急外来で心拍再開したのも弟さんが来た時だと聞いていたので非科学的ですが、ああ、この兄弟、仲が本当にいいんだなあと思いました。
彼がここまで頑張っているのも、水を吐き醜悪な姿を晒さないのも、弟さんのためなのかなあ、なんて感慨にふけったりもしたのです。

そして弟さんが退室してしばらく経ってからです。
今度は奥さんが面会したい、とインターホンを鳴らしてこられましたので「どうぞ」と応えました。
多分、お子さんたちを連れて来たんだろうなあ、と思っていたのですが予想に反して奥さんと奥さんのお母さんの二人でした。
お母さんに支えられるようにして入ってきた女性を見て、看護師一同息を飲みました。

―――――細い。

モデル体型とかそんなんじゃありません。 飢餓域。
骨に皮がへばりついているだけのような、そんな骸骨みたいな体なんです。
関節などは骨と骨の継ぎ目がわかるほど。 正面からでも不気味なその姿は、横を向くと人間とは思えないほど薄っぺらく醜悪でさえあります。
傷ひとつない身体のこの異常ぶり。

――――このひとはおかしい。

当初得ていた『患者本人が精神疾患』という情報より、弟さんの『嫁さんが精神病』という情報のほうに信憑性が増し、看護師同士無言で視線を合わせました。
あまりの不気味さに近づきたくはなかったのですが、サインをもらわなければならない書類が二枚あり、朱肉とボールペンを持って二人に声をかけました。
書類の説明をすると、とりあえずサインの必要性を納得してもらえたのかボールペンを受け取ってくれましたが、ペンの持ち方がおかしい。
指全部を伸ばして、親指と人差し指の間にペンを挟んで字を書くんです。
その姿がまた怖い。
かすかすの唇、目も半開きだからあまり乾かないはずなのに瞬きが異様に多い。
妙な書き方だから字が崩れているうえに筆圧が足りなくて複写できていない。

仕方なく「複写分にもサインいただけますか」とお願いすると「なにが?」みたいな顔で首を傾げられる。
日本語が通じないような錯覚に陥る。
どう説明したものか、と言葉に詰まっていると、お母さんのほうが「私が書きます」と受け取ってくれましたが、そんなやりとり意にも介さず奥さんは患者さんを覗きこんで何事かをかぶつぶつ言い始めたんですが、それがよく聞き取れない。
何言ってるのか、と耳を澄ませてみると、

「……どうしろっていうの? ……あたしにどうしろっていうのよ?」

と細い声で無表情にぶつぶつと呟いている。
気持ち悪い。
およそ死に添う伴侶の姿ではない。 湧いてくる生理的な嫌悪感を堪え、母親からサインを受け取ると、足早にその場から遠ざかろうとしました。 すると…・・・、

「う……あ!」

奥さんが小さく叫びました。 何事かと急いで振り返り、患者さんを見ると、

―――――水浸しなんでした。

水が噴き出している。
顔中からあんなに何をしても身体から出なかった水が、口から鼻から耳から噴水みたいに溢れだしてきていました。
どこにこんなに入っていたのか?、と目を疑うほどの量が次々と溢れ出してきます。  予防的に敷いていた吸水シーツでは追いつかない勢いで水が出てくる。
しかも、ひどい血の匂いがする。 排便と内臓と汚水の混じった終末期の血の匂いが……!。 肛門括約筋が弛緩し、壊死した内臓が排出された証拠です。
病室はあっという間に腐臭で満ち、汚水はシーツを介して床に滴り落ち床に広がる。  「汚い汚い」とヒステリックに騒ぐ奥さんを強制退出させて処置にあたりましたが、予想通り腸の肉片が混じった血便も流れ出てなかなか止まらない。

こういう場面で毎回思いますが、人の死に際とはどうしてこうも醜いのかと絶望します。「……見せたかったみたいですよね」
汚水を処理するのを手伝ってくれながら、同僚がそっと言いました。
「奥さんにこれ、見せたかったみたいですよね」
そうかもしれない、と思いました。
彼がああまで美しく頑張っていたのは、汚水を吐き醜悪な姿を晒さなかったのは、弟さんに『見せたくなかった』のではなく、奥さんに『見せたかった』のかもしれないと思いました。 それはまるで、性悪な仕返しのようにも感じました。
顔面から滲む汚水は止まる様子はありませんでしたが、時間経過と共に幾分かはましになり腹腔内の腐敗排泄物もとりあえず一旦落ち付きましたのでご家族を呼びました。
それがなんであれ、体内のものが多量に失われると人間のバイタルは一気に下降します。 現にその時、脈の間隔が伸び、血圧が下がり、呼吸器のアラーム回数も増えたので、いよいよ危ないと判断したためです。
連絡を受けて一番に飛んできたのはやはりというか、弟さんでした。

「兄貴! 兄貴――っ!」

と、自分の手が汚れるのもかまわずその額に触れ、ぽろぽろ泣きながら、
「もういいから。もう頑張らんなくていいから。 いいから。 後は俺がなんとかするから。 俺が全部ちゃんとするから」
と必死に語りかけていました。
ここの家族に一体何があったのだろう、と思いながらふとモニターを見るた私はまたもぎょっとします。

――――脈が戻っている。

〈ピ―― ピ―― ピ―― ピ――〉 あんなに不整脈が出て間延びしていた脈が、また綺麗な正脈になっていました。 心臓が綺麗に動けば、血圧は勿論上がります。
脈と血圧が持ち直してきている。 あんなに血を失ったのに……!
絶句しながらも、医学的には確実に本人の脳は死んでいる状態ですが、やはり医学や科学では説明しきれないなんらかの法則みたいなものはあるものだなあと見守っているその時、奥さんが〈すーっ〉と物音も立てずに入室してきました。
先刻来た時と同じように、奥さんのお母さんに支えられながら幽鬼のように部屋に入ってくる姿に思わず嫌悪感がこみ上げる。 あんたは来るな! 思わず心の中でそう叫ぶが、奥さんは患者のベッドサイト吸い寄せられるように辿り着く。 その瞬間、崩れるようにバイタルが悪化し心臓は二度と動かなくなりました。

――――死亡です。

今度こそお亡くなりになりました。 ああ、と病室にいた看護師全員のため息が漏れました。 普通ならここで私達が死後処置としてご遺体を清めさせていただくんですが、今回は『不審死』ですので警察に連絡しました。

ほどなくして警察が来て家族と話していましたが、渋い顔でこちらに振り返り「ドクターを呼んでくれませんか」と言うんです。 指示通り電話でドクターを呼ぶと、廊下でなにやらもめている。 病棟の責任者としてどうしようもなく話に加わると、どうやら奥さんが頑なに検死を嫌がっている、というのです。

「奥さんがこれ以上ご遺体に傷をつけたくないっていうんです。 気持ちはわかりますけど状況が状況なんで、まあ目撃者もいたし、ほぼ自殺で間違いないと思うんですが……先生はどう思われますか? なんか薬飲んでいた可能性とかありますか?」
「そんな特殊な血液検査してませんし、分かりませんからなんとも言えません」
「ですよねえ。 ではご遺体を傷つけないで全身のCT検査をするというやり方もあるんですけど、それ確認したら検死として警察が費用の負担できんのですよ。 奥さんは自費でそんな事したくないって言うし。 病院の方では負担して……もらえませんよねえ」
警官が甘えるような粘っこい口調でそう言うと、ドクターは首を横に振り、
「それはできないでしょう。少なくともそれを了承できる立場に僕はいませんよ」
と、拒絶しました。
「ですよねえ。 やっぱり警察が連れて帰らなきゃダメかあ」

そんな押し問答が二十分くらい続く中、他の患者さんも診なければいけない私は痺れを切らし、
「どうしても検死しなきゃいけないんですか?」
と、逆に問うと、警官は困ったような顔をして呟くように言いました。
「薬を飲まされていたかどうかが分かれば……」
飲まされていた? 私は声が出そうになりました。 つまり警察は、奥さんが頑なに検死を嫌がっているのがどうにも気持ち悪く、何かを疑っている事が分かりました。
私は慌ててドクターの顔を見ましたが、ドクターの顔色は先程と変わることなく廊下の壁に突っ立っていました。
「とにかくうちの病院ではこれ以上の事は費用が発生しますし、その費用を家族が払わない、と言っている以上なにもできません」
と何度もドクターが言ったところ、やっと警官も諦め遺体を連れて帰ってくれる流れになりました。
遺体を収容する黒い袋が持ち込まれ、患者さんが噴出している汚水ごとその中におさめジッパーを固く締めました。
警察に到着して袋を開けたら〈ばしゃーっ〉って凄まじい事になるんだろうな、と思いながら袋を見ていた私は背筋が凍りました。

―――――動いてる。

遺体の入った黒い袋が、かすかに上下して動いてるんです。
いや、動いているというより、呼吸している、みたいに見える。 見間違いかと思い注意深く凝視しましたが、確実に動いている。
それはまさに横隔膜運動のそれです。
胸隔が広がり、そして狭まる。 呼吸音は全くしないのにそれが続く。

死亡したあと肺に残っていた空気が筋弛緩に伴い吐き出され、胸隔が下がるのは珍しいことではありません。 しかし、上がることはない。 しかも彼の肺は水浸しで今も水を吐きだし続けている。 呼吸運動などできるわけがない。
なのに目の前のそれは上下している。
夢でも見ているのか? と他の看護師達を見渡しましたが、全員が袋を見て絶句している。 私だけが見ている光景ではない。 そんな私達をよそに、
「お世話になりました」
とその袋を担架に乗せようとする警官に驚き、慌てて止めました。
「あの」
それ、とも言えず、遺体、とも言えず、指をさすのもためらわれ、視線だけ向けながら言いました。
「動いてます」
私の言葉に警官は驚くでもなく、ああ、という顔をしてそっけなくこう言いました。 「よくある事です」
言葉を失い立ちつくし、去っていく警官達と彼を見つめる私の横にいたドクターが呟きました。
「弟さんに生かされ、奥さんに殺されたね、あの人」

以上が二月二日に私が体験した事です。
怪異――といえば最後の数行しかないのですが、医療人としての怪異はそれより前にあった様々なのでせっかくだから全部書きました。
このあとすぐにSNSに書き込もうかと思ったのですが、自宅の畳を歩いていただけなのに左足指を骨折いたしまして、これはちょっと待ったほうがいいな、と判断し、SNSからも離れ、喪が明ける四十九日を過ぎた今になってアップした次第です。

当初は『集め話』と同じように自分をもっと客観的な場所に置き、思考とかも全部抜いて淡々と書こうと思ってたんですが……そうするとパソコンがうまく機動してくれないトラブルが発生しまして。
どうやっても文字が出てこないとか、変換できないとか、やっと変換できたらデータが丸ごと消えるとか……なんというか、かしこまって事実を綴るよりも、
『アンタの思った事、感じた事もちゃんと書けよ!』みたいに言われている気がしまして。 そうやって書いて読み直してみると私の奥さんへの感想がひどい。 しかし、これを書いてほしかったんだとしたら、患者さんはやっぱり奥さんになんらかの仕返ししたかったんじゃないかなあとか思うわけです。
そして私はといえば、怪談集めが趣味ではありましたが、こんな恐ろしい体験は初めてでした。 終始生きた心地がしませんでした。

で、憶えてらっしゃいますか? 
この患者さんが担ぎこまれた日の朝に私がアップしたSNSの内容を……。
私は再び【赤異本】の『腐女史地獄』の話を……また『血』の話をしたんですよ。
遺体の処理中、血肉の混じった汚水を全身にたっぷり被りながら〈あんな事書いたせいだ。 先生と出会ったせいだ〉と思えてしょうがありませんでした。
先生はご自覚はおありのようですが(苦笑)怪異を引き寄せてしまう人……それもご自分だけでなく、関わった者にも次々と怪異を引き寄せさせてしまう人なんだと確信いたしました。 


「そうだった!」
僕はミヤビさんとのSNSでの最後のやり取りを思い出しながら叫んだ。
「そうだよ。 あの日もまた『血』の話をしたんだった。 そしてその直後にミヤビさんはこんな目に遭っていたのか! これでは音信不通になるのも仕方ない。 それに……」
足指骨折は尋常ではない!
予想もしてなかった壮絶な怪異譚にパソコンの前で固まりながら、僕の胸中に一つの思いがせり上がってきた。
「ミヤビさんは白すぎる。 僕と関わってはいけないのではないか?」
潔癖な人柄のミヤビさんは免疫がない分ダイレクトに来る! のではないか? これから更に酷い災厄が彼女の身に降りかかるのではないか? そう思えてならなかった。
まだ聞いてない怪談も多数あり、大変惜しかったのだがこれは異常事態だ。 
「もう僕との交流は避けた方がいいのではないか?」
と、思い切って提案してみたのだが……、

「大丈夫です。 頑張ります」
との気丈な返事をいただき(何を頑張るんだろう?)と思わず笑ってしまった。
梃子でも動く様子が無く、結局彼女とのやり取りは再開した。
果たして、その後は大した怪異も起きず、彼女は元気そうにSNSに顔を出していた。
「取り越し苦労だったか?」

二ヶ月経ってショックも和らぎ、ようやく安心した僕はこのお話をこうして怪談として書きはじめた。
ミヤビさんの文章はキレイで描写も的確、殆んどいじる必要がなかった為にスラスラと書き進める事ができた。 なんだ全然大丈夫じゃないか。 やっぱりオバケなんていないんだよ。 あれはただの偶然だったんだよ。 嬉しくなった僕はその事をSNSに書いた。
「怪談書きスタートしました~♪」
と、脳天気に書き込んだ。
すると……、
ミヤビさんから一通のメールが送られて来た。 
「ん?」
なんだなんだ? 胸騒ぎを覚えながら急いでフォルダを開いた僕はまたも唖然とする。



先生、怪談描き始められたんですか? 
それはひょっとして今週の日曜からですか?
わけのわからない理由により周囲の人間関係が劣悪化しており現在進行形です。
これが日曜スタート。
そして医療勉強会だった十三日の金曜日(笑)事故現場であろうアスファルトに広がる血だまりを車で踏みました。

さらに、職場までの道で交通事故が多発しているらしくこの一週間すべてパトカーに遭遇し、ひどいときは迂回させられる事になっています。
その事故の一つなのか? 八年間看護師をしていて初めて聞く症状の入院患者にあたりそうになりました。
『高エネルギー外傷』というものなのですが……不幸にも救急外来でお亡くなりになり入院はしなかったのですが、聞いたことのない病名でしたので調べたらえげつない病態でした。 記します。
『身体に大きな力(高いエネルギー)が加わって起こった外傷のこと。スピードの速い交通事故、落下事故などが該当する。身体内部の広い範囲で組織が破壊されている状態。死亡率高し』だそうです。
あと……(これが一番強いかな?)栃木にいる親戚から電話があり、叔父に呂律障害と痺れ、ふらつきが出現。検査の結果脳腫瘍が見つかり十日に緊急オペが決まりました。



「はは……ははは………はは」
メールを読み終えると、引きつったような笑い声が暗い室内に響き〈ぎょっ〉とした。
だが、それは自分の洩らした笑い声だった。
驚き呆れて笑い声が出てしまったのだろうが、自分でも〈ぞっ〉とするようなどす黒い笑い声だった。

彼女の予想通り、僕は日曜の朝から怪談執筆を始めていた。
そして今回もまた、それに呼応するかのようにドンピシャのタイミングで彼女に再び災厄が訪れていた。

-終-
creator-masaya-hokazono
ギャグから始まり。ファンタジー、SFと移行していき、今はホラー。何故こうなったのか?とよく尋ねらる。昔、ある俳優さんから『役者はお祓いはしないんですよ』と教えられて驚いたことがあ...
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