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【急募】変態がいて困ってるから助けて【真剣】

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
赤異本 外薗昌也 より 抜粋
「気がついたら友達と呼べる友達はいなくて……。部屋に籠って漫画やアニメばかり見ている人間になってました」
弱く笑いながらそう話すのは、書店に勤めるD子さん。
見るからにおとなしくて控えめそうな女性だ。
対人関係が苦手で、人に何か言われても言い返せない。抗えずにいつも言いなりになってしまう。
「もっと強くならなきゃいけないって、わかっていたんですけど……」

そしてD子さんは『変態』につけ狙われるようになった。
「はじめは〈いやらしい本〉攻撃でした。私がレジに立つと、見計らったように来るんです」
その変態男はレジにエロ本を持ってきては買って帰る……を繰り返したらしい。
三十歳前後に見えるその男は病的に痩せ、体臭もきつかったという。
「じーっと私の顔を見ながら買っていくんです」
「明らかに私の反応を見て愉しんでるのがわかりました」
D子さんは必死に平静を装うのだが、恐怖と気持ち悪さで気を失いそうだったという。
「店長にも相談したんですけど……」
本買ってくれるんだから我慢してよ。と言って対処してくれなかったそうだ。
「ひどい話ですねえ」
思わず同情する僕にD子さんは続けた。
「でも、その頃はそれくらいで済んでまだよかったんですよね」
「……というと?」

その変態男はD子さんが抵抗しないのをいいことに、変態行為をエスカレートさせた。
「ある日、黒いコートを着て店に現れたんです」
「え……まさか……?」
D子さんは顔をひきつらせて〈こくん〉とうなずいた。
男は周囲を確認しながらD子さんに近づくと、彼女の前でコートを開いた。
「何も着てませんでした。もう頭が真っ白になりましたよ」
顔面蒼白になり叫び声もあげられないD子さんの様子を愉しむように、男はニヤニヤと笑っていたという。
「まずいと思いました。」
「このままだと自分の身が危ないって。もし尾行とかされたらどうしようって……」
なんとかしないといけないと真剣に考えはじめた彼女だったが、撃退法が思いつかない。
友達のいないD子さんには相談相手もいない。

「絶望的な気分で家に帰って、私、パソコンを開きました」

そして彼女はインターネット上の掲示板に助けを求めた。
見つけた掲示板に片っ端から自分の実状を書き込んでSOSを出したらしい。
しかし返ってきたのは
〈そんな職場はすぐに辞めるべき〉
〈早くその街を出ろ〉
〈そういう男には強い態度を示さなきゃ〉
〈警察に突き出せ〉
〈自分の身は自分で守らなきゃだめ〉
…………といった内容の回答ばかりで、D子さんの心には響かなかった。
と、そんな中で彼女の目に留まったのは、自称黒魔術師の女性の発言。

〈呪ってやるのです。今の自分にできないことも、パワーを補えばできるようになります〉

D子さんはすぐに、その自称黒魔術師に連絡をして助言を求めた。
「蛙や蛇や蜥蜴が、私に力をくれるって言われて。すぐに実行しました」
自称黒魔術師のアドバイスはこうだった。

呪いたい相手を強く念じながら、蛙・蛇・蜥蜴などを干からびさせてから砕き、きちんと念を込めて作った手製の袋に入れて持ち歩く。

「……実行したんですか?」
「はい。私、田舎育ちなので蛙や蛇くらいなんともありませんでした」
心なしか力強く、ピントのずれた返答をするD子さんに僕はただ口をあんぐりさせて何も言い返せなかった。
そんな僕には一向にかまわず、彼女は話を続ける。
「効果はすぐに現れました。」
その『お守り』を身に着けて生活し始めてすぐ、男は再び黒いコート姿で現れたらしい。
「私を見つけてすぐにニヤニヤしながら近づいてきて。でも私、お守りを握りしめて男を睨んだんです。魔術師さんに言われた通りに強く念じました。」
男は急に焦り始め、後ずさりすると店の外へ逃げて行ったという。
「やった!と思いました。魔術は本当に効くんだって、すごく感謝しました」
嬉しそうなD子さん。表情も生き生きとして、さっきまでとは別の女性のようだ。
僕は単にいつもと違うD子さんの気迫に男が気負されただけだと思ったのだが、何も言えずに黙って相槌だけ打っていた。

「男を撃退してほっとしてたら店長がやってきて。二階に伝票持って行ってくれって言われたんです」

ヒヤッとした僕の予想は的中した。

「店長にも仕返しをしようと思いました」
彼女は再び念を込めながら、店長に向けた『お守り』を作ったらしい。

「でも、今度は違う効果が現れたんです」
少し照れながらD子さんはそう言った。
「店長を見るたびに念を送り続けていたら、いつの間にか彼が素敵な人だってわかるようになって。彼も、私を一人の女性として見てくれるようになりました」
あっけにとられる僕に、彼女は満面の笑みで最後にこう言った。

「もうすぐ婚約するんです」


もはや魔術は縁結びの神様なのか。
一番の脅威は別の所にあると、鳥肌を立てながら僕は彼女と別れた。
creator-masaya-hokazono
ギャグから始まり。ファンタジー、SFと移行していき、今はホラー。何故こうなったのか?とよく尋ねらる。昔、ある俳優さんから『役者はお祓いはしないんですよ』と教えられて驚いたことがあ...
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