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友達に誘われ住み込みのバイトを始めたが、そのバイトの内容が…

2016年10月29日

『魔界ぐるぐる巡り どんぶらこ編』 異世界編①―きっかけ-前編-餌食姫

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
魔界ぐるぐる巡り どんぶらこ編より「異世界編①―きっかけ -前編-」
とんかつ屋さんで働きはじめてから1年くらいしてからでしょうか。
私は17才になり、この頃中学時代にちょこちょこ遊んでいた幼なじみの直美とよく会うようになりました。
直美は私と同じく幼い時から片親で育ち、中学時代は不登校仲間でした。
境遇が似てるので気が合い、気遣いせずに遊べる友達でした。

ただ私もそうなんですが、直美はとても人を信じやすい性格で、無防備すぎるところがあって危なっかしく、ハラハラさせられる子でした。
直美は一応高校に行ったのですが、すぐに中退し、地元の焼き鳥屋さんで働いていました。

そんなある日、夜中に直美が酔っ払って電話をしてきました。

「あ、えじきちゃん?あのね、今日知り合ったホストのカイ君って人がね、うちらにいい仕事があるって教えてくれたの!また詳しくは明日連絡するね♪」

とだけ言って一方的に切れました。

ホスト…?

酔っ払ってるし、なんだか嫌な予感がしましたが、次の日、直美の家に行ったので何となく聞く事にしました。
直美はもう酔っていませんでしたが、興奮した感じで話しはじめました。

「何かね、昨日先輩のおうちで飲んでた帰りにね、道で座って休んでたらカイ君ってホストの人が直美に話しかけてきたの。そして何かいい仕事ないかな?って話になったら、じゃあ知り合いに頼りになる人がいるから、その人紹介してあげるよ、ってことになったのよ!」

「ふ~ん、そっか。で、どんな仕事なの?」

「内容はよくわかんないけど土方系かな?とりあえず「ろくろ首県」の「天井下り駅」ってとこに、ターちゃんって人がいるから、会うといいよって。うちら2人で住み込みで働かせてくれるんだって、行こうよ!」

そこまで直美の話を適当に流してすまそうと考えていた私は『住み込みで働く』という言葉を聞いて急に気が変わりました。

実は、そのころ私は家を出たいと考えていたからです。
実家は相変わらず超貧乏な上、妹はまだ中学生だったのでママは朝早くから夜遅くまで働いていました。
私がいなくなれば家族はかなり楽になるはずです。
チャンスだと思いました。

「…実家も狭いしね。じゃあ、行ってみよっか?」

こうして私はアルバイトを辞め、その話に乗ることにしました。
そして1ヶ月後、家を出て直美と一緒に旅立ったのです。

一応、実家には絶対に安全な所でちゃんとした仕事だから大丈夫、と説得しておきましたが、実際はどこで何の仕事をするのか全く知りませんでした。
今ならとんでもなくむちゃくちゃな話だと思いますが、当時は家を出て一人暮らしができる!ということで頭が一杯だったので、そんなのはどうでもよかったのです。

その結果、本当にとんでもないことになってしまうのですが。

私と直美は東京を離れ、その『ターちゃん』とかいうおじさんが待つ「ろくろ首県」の「天井下り駅」に向かいました。

田圃の中にやたら広い直線道路があって、その両脇に駐車場付きのでっかいパチンコ屋やブックオフや「紳士服のアオキ」とかがボコボコ並んで建ってるような田舎です。
駅の階段を下りると、肩から四角い頭が直接生えてるような、小柄でなんだか亀のような形をしたおじさんが待っていました。
この人がホストのカイ君の言う『頼りになる人』、ターちゃんでした。
またしても年齢不詳です。

「お~い、お前らか。よく来たな!とりあえず車で迎え来たから、早く乗れよ!」

ターちゃんはギョロ目をグリグリさせながら言いました。

「うちら財布とケータイしかないよ?いいの?」

「あーかまわねぇよ。まずアパート行ってから決めるべ~」

ターちゃんは調子よくペラペラと喋ります。
怪しい、胡散臭さ満載です。
私はだんだん気が重くなってきたのですが、家を出てきた以上もう仕方がないので、言われるまま直美と車に乗りました。
15分位走らせてると、とあるアパートへ着きました。
2階だてのごく普通なアパートです。

ターちゃんは1階の2個目の部屋の鍵を開け、私達を部屋の中へ案内しました。
部屋に入るとびっくりです。
物や家具など何もなく、ペットボトルの水が2本置いてあるだけでした。
ターちゃんはどっかと床の上に腰をおろすと勝手に話し始めました。

「まぁ座れよ。俺は難しい事、何も言わねぇ。適当に気軽にしといてくれや…でだ、仕事内容は簡単だ。俺の携帯にかけてくるおやじたちを90分相手するだけ。相手の指定するところにお前らを連れてくから適当にやってくれ。時間になったら俺が迎えに行くからよ。報酬はお前らが8000、俺の取り分が7000、悪くねぇべ?」

シーン…
私はうまく理解できなかったのですが、何かまたアレな感じになってるというのは察知できました。

「え…そっちか…どうするえじきちゃん?」

「お、おう…」

「う~ん…まぁいいか。」

「え?」

この会話ひどいですね。
その後、ターちゃんは俺のタイプの女という話をひたすら話してましたが、恐ろしく興味がないので聞き流していました。
しばらくすると携帯が鳴りました。
どうやら仕事の依頼のようです。

「じゃあ、行くべ。直美から行くか。えじきも一緒に来い。逃げられたら困るからな。」

え?今何と?と思いましたがあれやこれやと車にふたたび乗せられました。
逃げたらどうなるんだろう?無理やりやらせられるのかしら。
お金もあんなこと言ってましたが、実際はもっともらってピンハネするつもりだったのかも知れません。

10分位走ると駐車場に着きました。
ひょろ長いおじさんが立っています。
ターちゃんはそのおじさんとお金のやりとりをして、車から直美を連れてひょろ長いおじさんに引渡しました。
そして車へ戻ってくると、また走らせます。
私は恐る恐る聞きました。

「どこ向かってるんですか?」

ターちゃんはふんふんと鼻歌まじりに、

「アパートに決まってんだろ。しかしお前らはいいよなぁ、女ってだけでこうして楽々仕事できちゃうんだもんなぁ~」

私は心の中で今すぐ肥溜めの中に落ちてくんないかな、と思いつつシカトしていると、アパートに着く前にまた電話が鳴りました。
またも仕事の依頼なようです。
ターちゃんは急にアパートと逆方面に走らせました。

5分程たつと田舎によくあるコテージ風のモーテルに着きました。
私はまさかここでもしや…とドキドキしました。

その時、もう1台の車が到着しました。
出てきたのはシャツにスラックス姿の、一見普通の人のよさそうなおじさんでした。
ターちゃんは私を車から降ろすと、

「また後で迎えくるから何かあったら電話しろ。」

と言い、番号が書かれたメモを渡して行きました。
振り向くと気の弱そうなおじさんが頬を赤らめながら立ってました。
私はこの早い展開は…と思う暇もなくそのおじさんに背中を押され、部屋へと連れてかれました。
ドアを閉めると、おじさんはモジモジしながら話しかけてきました。

「ねぇ、電話で聞いたんだけど、こういうの初めてって本当…?」

「あの…初めてもなにも、そんなんじゃないんです」

「え?まさか知らされないでここに来たとか?!」

なんかびっくりしてるみたいでした。
でも、私はちょっとホッとしました。
身なりや声の感じからこの人はまともな気がしたからです。
まあ、こんなとこに来ててまとももくそもないんですが。

「はい、全く知らなかったし、こんなとこ来る予定はなかったんです。でもあのさっきのおじさんが訳わからなくて…いや、でも私達も知らないで来たのが悪かったかもです…」

おじさんは真剣な顔で聞いていました。

「とにかくすみません、何もできません、ごめんなさい」

と私はおでこを床…は痛そうなので布団の上にポフンとさせ謝りました。
これで許してくれるだろうか?おじさんがどういう反応をするのかドキドキしながら頭を伏せていると、

「そうかー。何かそんな事聞いちゃったら何も出来ないじゃん。」

と、言いました。
拍子抜けするくらいあっさりと言ってくれたので、なんだか信じられませんでした。

「でもせっかく会ったんだからさ、とりあえずビールでも飲もうよ」

そう言っておじさんはTVを付け野球中継に合わせると、冷蔵庫から瓶ビールを出してきました。
そしてコップに2つ注ぎ、カンパーイ、チン。

「………あの…ビール飲めません」
(この時、私は全くビールが飲めませんでした)

「いいよいいよ形だけ。でもさ、色んな理由があるかもしれないけど変な道に走っちゃダメだよ。俺が言うなよってか!アハハハ」

私は早く時間過ぎないかなぁ、って思っておりました。

でも今思い返すと奇跡のような優しい人でよかったですけどね。
その後、

「僕、クラシック音楽が好きでね~」

などと、たわいもない話をしてるうちに時間になりました。
私が帰ろうとすると、おじさんは最後にぎゅうさせてもらっていい?と聞いてきました。
私はそのくらいならいいかと思い

「はい。」

と答えると、おじさんは私をぎゅうう~っと抱きしめてきました。
私は抱きしめられながら、うーん、これは現実なのだろうかと自問自答しておりました。

ejikihime
ホラー映画と漫画とハロプロとウサハナが好きな変態です。体験手記『魔界ぐるぐる巡り』を模索舎さまにて販売させて頂いてます☆普段はオカメインコと暮らしながら時々呪みちる先生のお仕事の...
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