tsukuribanashi-thum

話していく内に話の中身に尾ひれがついて・・・あると思います!

-恐ろし屋厳選怖い話-
~恐ろし屋 怖い話シリーズ~
怪談実話 病棟の道化師 より
「作り話」
著書:遠山 雅
外科医として勤務するRさんの話である。
Rさんが中学一年生のころ、学校の裏山で首吊り死体が発見された。
青いビニールシートに覆われたそれは見ることができなかったが、劇的な事件が身近で起こったことにRさんは興奮した。

 成人してから話のネタにそれを披露するたび、話を盛りあげるために少しずつ創作を混ぜこんだ。
「死んだのは髪の長い女で……」
「前日に山に入っていく姿が取り憑かれているようで……」
 それはもう、フィクションに近いものになっていた。
ある夏、同僚の医師と飲んで、部屋に泊めてもらうことになった。
そして、何気につけていたテレビニュースの流れで自殺の話題になったので、
「そういや昔な……」
と、中学のあの事件を話した。
何度も話した内容だ。臨場感にも自信がある。
しかし、同僚は話の途中から相槌さえ打たなくなり、視線もRさんから微妙にそれた後方ばかりに注がれるようになった。

なんや。失礼な奴やな。

そう思ったという。
が、そのとき、同僚が険しい顔で口を開いた。
「首吊りした人、ほんまに女の人なん?」
どきっとした。
「そうやけど……なんで?」
「おじいさんやのうて?」
「は? なんや、おじいさんて……」
同僚は、「違うんやったらええ」と言って、Rさんになぜか塩水を飲ませた。
酒酔いに効くからと言われたが、そんなこと初めて聞く。
そうこうしているうち、寝ようと言うことになった。
すると同僚が雨戸を閉め始めた。
「なんで雨戸、閉めるんや?」
と聞くと、
「これのが冷房効くから」
と言われる。
でも、その声が妙に固い。
腑に落ちないまま、電気を消した。
しばらく寝た。
真夜中、雨戸のガタガタという音に目が覚めた。

えらい風吹いとんな……。

そう思った。
だが、それにしては少しおかしい。風で揺れているような音ではない。
あえて例えるなら、それは外から雨戸を開けようとするような……そんな音だ。
同僚の部屋は、マンションの三階にある。ベランダがあるにしても、こんな夜中に声もかけず雨戸を開けようとするのは普通ではない。
「おい」
Rさんは同僚に声をかけた。
「おい、起きとるか」
同僚は答えない。だが、気配で起きていることはわかっていた。
「なあ、雨戸おかしないか?」
同僚は答えない。
「なあ、起きてや。誰かおるで多分」
そこでやっと同僚が目を開けた。
だが、同僚はRさんの言葉を無視して、ぽつりとだけ、声を出した。
「もうあの自殺の話、せんほうがええと思う」
同僚がどうしてそんなことを言ったのか、なぜ雨戸を閉めたのか、なぜ雨戸が鳴ったのか、Rさんは聞けなかった。

ただ、もう、その話は、二度としなくなった。

-終-
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兵庫県出身。幼いころから怪談好き。関西の病院で看護師を勤める傍ら、医者や同僚、患者たちを中心に怪談収集を始める。外薗怪談では「白い人」として知られる。医療関係者を中心に怪談奇譚...
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